元祖バイアウトファンド・世界最大級『KKR』の年収・待遇・転職動向を徹底解説
「世界的にも有名なKKRってどんなプライベート・エクイティファンドなの?」
「KKRの転職ってとても難しいと聞いたけど本当?」
世界中の投資家から熱い視線を集めているKKR(Kohlberg Kravis Roberts & Co. L.P/コールバーグ・クラビス・ロバーツ)は世界でも最大級のプライベート・エクイティファンドです。
そんなKKRの日本の拠点KKRジャパンは、転職市場で最も競争が激しいプライベート・エクイティファンド業界の中でも特に人気が高く、難易度の高さもけた違いと言われています。
そんな国内外から注目を集めるKKRジャパンについて、母体であるKKRの歴史と合わせて現在の転職動向や気になる平均年収・待遇を解説します。
世界最高峰のプライベート・エクイティファンドで働きたいとお考えの方は必見です。
1.外資系プライベート・エクイティファンドのさきがけ・KKRの概要
世界でも最高峰のプライベート・エクイティファンドであるKKRについて詳しく解説します。
- KKRの歴史
- KKRの特長
- KKRジャパンの事業内容と実績
圧倒的な売り上げを誇るKKRは、その歴史や変遷を知れば知るほど興味深いプライベート・エクイティファームです。
世界屈指のKKRについて1つずつ見ていきましょう。
(1)KKRの歴史
KKRはカーライル、ブラックストーンと合わせて御三家と称されるアメリカ発の世界的プライベート・エクイティファンドです。
1976年にジェローム・コールバーグ・ジュニア、ヘンリー・クラビス、ジョージ・ロバーツの3人により設立されて以降、インフラ・不動産・クレジット・ヘッジファンドを含む様々な資産クラスの運用を行っています。
KKRの知名度を一気に押し上げたのが1989年にRJRナビスコを史上最大となる250億ドルのLBOによって買収した一件です。
そのほかにも、世界初の10億ドル以上のLBO、世界初の公開会社への友好的公開買付によるバイアウト、各市場(アメリカ、オランダ、デンマーク、インド、シンガポールなど8か国)での過去最大のバイアウトなど、プライベート・エクイティ業界において歴史に残る案件を数多く手がけてきたプライベート・エクイティファンドでもあります。
本社をニューヨークに構えるKKRの運用資産は2,520億ドル(2020年12月31日現在)、プライベート・エクイティ・ファンドの投資先企業の売上高の合計は2,380億ドル(2020年9月30日現在)にのぼっています。
1976年の設立以降、KKRの運用期間24か月以上のプライベート・エクイティ・ファンドの累計総内部収益率(IRR)は25.6%(純内部収益率は18.9%)、同期間のS&P500指数の収益率は7.0%(2019年12月31日現在)と堅実かつ一貫した運用実績を続けています。
また、投資規模が大きいだけでなく、1400人を超える従業員が在籍、450人以上の投資や事業運営の専門家を擁し、北南米・ヨーロッパ・中東・アフリカなど世界各地にオフィスを構えるなどKKRは企業規模も世界最大級です。
また、アジア投資プラットフォームを拡大するために2006年に日本法人として設立されたKKRジャパンは、中国(北京・香港・上海)、韓国(ソウル)、オーストラリア(シドニー)、シンガポール(シンガポール)、インド(ムンバイ)のオフィスと90人超のエグゼクティブ(役員)で構成されるアジア太平洋チームの中核的存在として活動しています。
現在までに日本を含むアジアを対象とするプライベート・エクイティファンドを4本組成し、様々なアジアの企業への投資を活発化させています。
会社名 | 株式会社KKRジャパン(KKR Japan Limited) |
種別 | プライベート・エクイティファンド |
本社所在地 | 東京都千代田区丸の内2-1-1 明治安田生命ビル11F |
代表者 | 代表取締役社長 平野博文 |
設立 | 2006年4月 |
資本金 | 不明 |
売上 | 不明 |
純資産 | 不明 |
事業内容 | オルタナティブ投資全般 |
ホームページ | http://japan.kkr.com/ |
沿革 | 2006年 東京オフィスを開設。KKRのアジア投資プラットフォーム拡大 2010年 総合人材サービス会社インテリジェンスに対し日本における初のプライベート・エクイティ投資を実施 2013年 インテリジェンスホールディングスをテンプホールディングスに売却 2014年 パナソニック ヘルスケアに投資。日本最大のカーブアウト取引の1つ 2015年 Pioneer DJに投資。KKRの日本における2番目のカーブアウト |
(2)KKRの特長
世界最大級のプライベート・エクイティ・ファームであるKKRの最も得意とする買収手法はレバレッジド・バイアウト(LBO)です。
1989年のRJRナビスコの買収の一件で”野蛮な来訪者”として世間から糾弾を浴びたKKRですが、それを教訓に「投資先企業を支援すること」「ESG(環境、社会、ガバナンス)」をKKRの優先事項とする方針へと転換しています。
その後、企業価値向上の実績を次々に積み上げることで悪いイメージを払拭し、現在では世界的にも紳士的なプライベート・エクイティファンドとして知られるようになっています。
具体的には、実績のある経営陣や起業家と緊密かつ協力的で強固なパートナー関係を結びつつ、KKRのグローバルプラットフォームのあらゆるリソースを活用して投資先の経営を支援するという友好的な手法で投資を進めていくのがKKRの最大の特長となっています。
また、投資会社・投資銀行、戦略コンサルティング、事業会社など様々なバックグラウンドを持つプライベート・エクイティ投資のプロフェッショナル達がそれぞれのスキル・知見を活かし、全てのステークホルダーが恩恵を享受するKKRの投資アプローチ(ステークホルダー・エンゲージメント)にも定評があります。
さらに、KKRは世界各地にあるグローバルな拠点網を活かし、専門知識に加えて地域に根差した知識・経験・ネットワークを持つ地元のプロフェッショナルによる独自の投資機会を創出や投資先企業の成長支援の面でも強みを持ち、他のプライベート・エクイティファンドとは差別化された成果を上げています。
他にも、KKRは堅強なバランスシートを持ち合わせており、自己資本を合わせて投資家と共に多額の資本投資や新たな投資戦略の開発、投資引受けを行うことができるのも大きな特長です。
また、実績が多くある一方で投資規模と比較して社員数が少ないため、メンバー1人1人の裁量が大きく、一人あたりの経験が多く積めて成長の機会も多いプライベート・エクイティファンドであることでも有名です。
さらに、プライベート・エクイティファンドは業界全体で女性のメンバー少ない傾向にありますが、KKRは珍しく女性メンバーの割合が高く、ライフプランやワークライフバランスを考えながら働きたい女性にとっても働きやすい職場として知られています。
(3)KKRジャパンの事業内容と実績
次に、KKRの日本オフィスKKRジャパンの事業内容と実績について見ていきましょう。
業界に関する知見・投資経験・経営ノウハウを持つKKRのプライベート・エクイティ事業では、大幅な業務改善または成長が見込め、優れた経営陣を魅了するような業界有数の企業に積極的に投資を行っています。
KKRジャパンもそれに倣い、日本の大企業の非中核事業の切り離し(カーブアウト)・新興IT(情報技術)企業への投資などを積極的に行っています。
KKRジャパンを一躍有名にしたのは、2010年の総合人材サービス会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア)の全株式をUSENから325億円で100%取得、約3年後の2013年にインテリジェンスを同業大手のテンプHD(現・パーソルホールディングス)に680億円で売却することで合意した日本第1号案件です。
それを皮切りに次々に有名企業への投資を進め、最近では2021年の楽天と共同して行った西友の買収、同年のオリックスの子会社である弥生の買収などを行っています。
これまでのKKRジャパンの投資実績は以下の通りです(一部)。
投資先企業名 | 投資年 |
インテリジェンス(現・パーソルキャリア) | 2010年 |
Pioneer DJ株式会社(現・AlphaTheta株式会社) | 2014年 |
PHCホールディングス株式会社(旧 パナソニック ヘルスケアホールディングス) | 2014年 |
株式会社日立国際電気 | 2017年 |
カルソニックカンセイ株式会社 | 2017年 |
工機ホールディングス株式会社(旧 日立工機) | 2017年 |
フロムスクラッチ | 2019年 |
AlphaTheta株式会社 | 2020年 |
弥生 | 2021年 |
西友 | 2021年 |
KKRジャパンでは、投資先企業の経営陣とパートナーとして協働するだけでなく、KKRのグローバルプラットフォームのあらゆるリソースを活用して経営を支援することで投資先企業の成長をサポートしています。
2.KKRジャパンの待遇
次にKKRジャパンの待遇について解説します。
- KKRジャパンの平均年収
- KKRジャパンの社風・社内環境・福利厚生
1つずつ解説していきます。
(1)KKRジャパンの平均年収
KKRジャパンの平均年収情報は公開されている情報は残念ながらありません。
PEファンドでは基本的には非公開求人であり、各々の実績を鑑みて年収がオファーされる形になります。
あくまで目安になりますが、若手層での採用の場合、年収はベース1,000万円~2,000万円にキャリーが加わる形で提示されるケースが多いようです。
PEファンドの報酬体系は、ベース(年俸)+キャリー(成功報酬)となっており、案件次第で計り知れない報酬を得ることができます。
特にKKRジャパンは少数精鋭で高額の資金を運用しているため、実際に得られる年収は求人情報で記載された数字よりも高いと予想されます。
キャリーの分配率は貢献度は役職に依存することが多いとはいえ、それでも転職後に手掛けたプロジェクトを成功させる実力があれば、ベースサラリーやボーナスに加えて桁違いの高額な成果報酬を獲得するのも夢ではありません。
(2)KKRジャパンの社風・社内環境・福利厚生
KKRジャパンは外資系らしく厳しい実力主義でありますが、日本人だけでなく海外出身のメンバーも多く国際色豊か、そして一人ひとりが働きやすく希望も出しやすい雰囲気のある風通しの良い社風として知られています。
その上、各業界のトップクラスの人材が集まっているので高い視座で学ぶことができるなど、プロフェッショナルと働くことで得られるメリットも多いようです。
また、メンバーのプライベートを尊重してくれる土壌もあり、ワークライフバランスを重視して働きたい人にとっても望ましい環境といえます。
さらに、オフィス内も清潔で社内の労働環境もオフィスのロケーションも良い点も口コミで高く評価されています。
プライベート・エクイティ業界は女性の進出が遅れているといわれている業界ですが、KKRジャパンは比較的女性が多く、産休を取っているメンバーもおり、女性が働きやすい職場とも言われています。
他のプライベート・エクイティファンドでは得難い経験をし、更なる自己成長が期待できるKKRジャパンが魅力的な職場であることは間違いありません。
3.KKRジャパンの転職動向
次に、KKRジャパンの転職動向について解説します。
- KKRジャパンの転職状況
- KKRジャパンの転職情報
- 業界未経験からでも可能か
究極の狭き門といわれる外資系プライベート・エクイティファンドTOP3の一角であるKKRジャパンへの転職は簡単ではありませんが、現在のメンバーの経歴や動向を見て十分な備えを持って臨めばチャンスはあります。
次に1つずつみていきましょう。
(1)KKRジャパンの転職状況
少数精鋭の体制を採っているKKRジャパンでは、現在ボリューム採用を行っていませんが、条件にマッチしていれば常にオープンに採用している状況です。
そうとはいっても、投資銀行や戦略コンサルで実績を積んだいわゆるエリートの人たちが次のキャリアとして高年収が期待できるプライベート・エクイティファンドを検討するケースが多いため、KKRジャパンの競争率・転職難易度も非常に高くなっています。
実際に、KKRジャパンのメンバーの多くが中途採用者であり、BofA証券(旧メリルリンチ日本証券)投資銀行・JPモルガン証券・ゴールドマンサックス証券・大和証券SMBC東京などの錚々たる金融機関、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどの大手コンサルティング会社の他、三菱商事や監査法人出身者で占められています。
万遍なくすべてに精通することができる投資銀行またはコンサル出身者が好んで採用されている傾向がありますが、年齢によっては全てのスキルや経験を網羅していなくてもM&A経験・投資経験など一部の業務経験を保有していることで転職を成功させているケースもあります。
(2)KKRジャパンの転職情報
現在、KKRジャパンの求人情報は公開されていません。
しかし、2021年4月にKKRはアジア太平洋地域を対象とするプライベート・エクイティファンドを総額150億ドル(約1兆6500億円)で設立しており、アジアプライベート・エクイティ部門共同代表の平野博文氏が「資金の3割程度を日本に振り向ける」と述べていることから、KKRが日本を含めたアジア市場に力を入れていることがわかります。
それを受けてKKRジャパンでも中途採用を積極的に行うことが予測されます。
KKRジャパンが求めているのは、具体的には投資銀行、FAS系ファーム、ブティックM&Aアドバイザリーファーム、戦略コンサルティングファーム、総合商社出身者など即戦力となる人材です。
また、公認会計士などの有資格者も優遇されています。
まずは非公開案件を数多く取り扱うハイクラス向けの求人情報の多い転職サービスや転職エージェントに登録し、広くアンテナを張ってKKRジャパンの求人情報を得るようにしましょう。
(3)業界未経験からでも可能か
KKRジャパンへの転職は業界未経験からでも可能ですが簡単ではありません。
そもそも、KKRジャパンに限らずプライベート・エクイティ業界は非常に高い専門性が求められる業界であるだけでなく、基本的に採用枠が少ない上に、その少ない枠をスキル・経験も豊富な投資銀行出身者やコンサル出身者といったエリートが競い合うという状況です。
業界未経験者がKKRジャパンへの転職を成功させるために、まず投資銀行やM&A関連・コンサルに勤めて着実に経験と実績・スキルを積み重ね、ステップアップしていくのが有効です。
その際、KKRジャパンが求めるファイナンスのバックグラウンドやプロジェクト遂行力・経営改善力を持った人材となることを目指すことも重要です。
KKRジャパンでは投資対象のステークホルダー(株主・経営者・従業員・顧客・取引先のほか、金融機関・行政機関・各種団体など企業のあらゆる利害関係者)や外部投資銀・法律事務所・会計事務所などの各分野のプロとも深く関わる機会も多いため、高いコミュニケーション力・プロジェクトマネージメント力を持つ人材になることも目指しましょう。
また、外国人と交渉ができるレベルの高い英語力も必要です。
KKRジャパンの投資先は国内企業であることがほとんどですが、その投資先企業が海外展開を視野に入れているフェーズにいる場合も多い上に、海外投資家から直接資金を集めるケースや投資の意思決定プロセス等で海外オフィスとコミュニケーションが必要なケースなども多いため、語学力に優れた人材は高く評価されます。
「英語が話せないと話にならない」とのメンバーの口コミもあることから、KKRジャパンへの転職時に英語力はマストと考えて良いでしょう。
転職準備の一環としてビジネスレベルの英語⼒を得ておくとKKRジャパンへの転職の際に大きな武器となるのは間違いありません。
まとめ
世界でもトップクラスのプライベート・エクイティファンドKKRの日本法人KKRジャパンは、これまでにも新聞の一面に載るような案件を多く手掛けてきた人気のプライベート・エクイティファームです。
KKRジャパンは非常に転職難易度が高いプライベート・エクイティファンドではありますが、アジアでの投資にKKRが積極的になっている今、チャレンジしてみる価値は十分にあります。
国際的に展開する外資系プライベート・エクイティファンドに興味があり、また自信もあるなら、今回の情報を参考にしてキャリアやスキルを磨き、KKRジャパンへの転職に挑戦してみましょう。
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