税理士の転職需要傾向は?転職を決意する理由や人気の転職先6選
「税理士の転職は、結局税理士事務所や会計事務所しかない?」
「転職したいが、もっと他の仕事にも関わりたい。どんな選択肢があるのだろう?」
税理士資格を持つ人材に対しての需要は拡大傾向にあり、転職の選択肢は多いです。
しかし、いざ転職するとなるとリスクや不安もあり、どこに転職すべきなのか迷ってしまうはず。
今回は税理士の転職の需要についてと、税理士に人気の転職先を6つご紹介します。
最後まで読めば、税理士としてあなたが求められていることがわかり、自信を持って希望の転職先を探せるでしょう!
1.税理士の転職は需要拡大傾向にある
税理士の転職は需要拡大傾向にあります。
その理由は下記の3つです。
- 若手の税理士の減少
- 税理士を採用する企業の幅が増えている
- 最も有利な年代は30代
1つずつ具体的に説明していきます。
(1)若手の税理士の減少
税理士の転職需要が拡大傾向なのは、若手の税理士が減少しているからです。
2012年より合格者が減っており、2019年には5,000人を切りました。
そのため業界全体で若手の働き手がおらず、特に税理士事務所では積極的に採用を行なっているのが現状です。
一方、税理士法人自体は増加していて、雇用先は増えています。
業務も税務だけにとどまらず、FAS系のコンサルティング事業を幅広く行なっている事務所が多いです。
仕事先は増えているのに若手がいない、つまり現時点では若手の税理士は売り手市場と言えます。
(2)税理士を採用する企業の幅が増えている
近年は税理士を採用する企業の幅が増えていることも、税理士の転職需要拡大の一因です。
税理士事務所はFAS系コンサルティングを行う事務所が増えており、税理士の人手が足りていません。
経営支援やコンサルティングを兼ねているので、通年を通して人員不足の状態になっています。
そのため、今までのように繁忙期のみの限定的な求人ではなく、事務所に在籍して一緒にコンサルや経営支援事業ができる税理士を求めている状況です。
(3)もっとも有利な年代は30代
税理士の転職にもっとも有利な年代は30代です。
今後の伸び代と、ある程度の経験を積んだ30代は即戦力になることもあり、税理士事務所をはじめとした企業で一番求められる人材です。
20代の税理士でも転職は可能ですが、経験は少ないためにポテンシャル採用を狙う方がよでしょう。
40代は求人数自体がガクッと減りますが、ポジションを上げての転職など、有利な条件を狙うことができます。
30代は伸び代と経験を兼ね備えて、最も転職に有利な年代です。
2.税理士の転職先一覧とメリット・デメリット
税理士の転職先一覧と、メリット・デメリットをそれぞれ紹介します。
- BIG4税理士法人
- BIG4会計事務所
- 中小会計事務所・税理士事務所
- 一般事業法人
- 金融関係
- コンサルティングファーム
これら6つが、税理士に選ばれる人気の転職先です。
1つずつ概要を紹介していきます。
(1)BIG4税理士法人
BIG4税理士法人とは、以下の4つを指します。
- PwC税理士法人
- デロイトトーマツ税理士法人
- KPMG税理士法人
- EY税理士法人
BIG4税理士法人は、大企業向けの税務や特殊税務、国際税務を提供しています。
規模の大きいBIG4税理士法人ならではの業務と言えるでしょう。
BIG4税理士法人をキャリアパスとし、大手コンサルティングファームやPEファンド、投資銀行への転職をする人も多いです。
#1:メリットとデメリット
BIG4税理士法人で働くメリットとデメリットを紹介します。
- 他事務所では経験できない税務実務を学べる
- その後の転職に有利なキャリアパスになる
- 産休や育児休暇など、女性にも働きやすい環境である
まずBIG4では、一般会計事務所で経験できない規模感の税務を担当できるのが一番のメリットでしょう。
高度な税務を学べるため、スキルを磨くための転職先として好まれます。
また、大手税理士法人での勤務経験は、その後のキャリアにとっても有効です。
いわゆる「箔が付く」と言う言葉通り、勤務経験を生かし、その後の転職の際にもアピールポイントになります。
BIG4税理士法人の仕事は激務ですが、大手である分、育児休暇や産休などの制度は整備されていて、男女問わずライフプランを考えやすい職場です。
- 業務が細分化されて、担当できる仕事が限定される
- 繁忙期が長く続き、激務になる
次にデメリットですが、業務はチームごとに分けられ、担当制になっています。
異動もほぼないので、担当できる仕事が限定されるのはデメリットでしょう。
事実、BIG4からの転職理由に「税理士の仕事の幅をもっと広げたい」と言うものが多いです。
また、繁忙期はかなり忙しく、終電まで仕事をすることもあります。
そのためライフワークバランスは取りづらく、生活が不規則になるのはデメリットです。
(2)BIG4会計事務所
BIG4会計事務所とは、以下のような事務所を指します。
- EY新日本有限責任監査法人
- 有限責任あずさ監査法人
- 有限責任監査法人トーマツ
- PwCあらた有限責任監査法人
いわゆる会計事務所のBIG4と言われる事務所です。
世界規模のグループに所属する監査法人で、監査・税務を中心として幅広いサービスを提供しています。
税務領域の仕事も扱うため、税理士の需要は高いです。
税金に関しての知識がある税理士はニーズが高く、また事業承継やM&Aなどの、コンサルティング業務にも携われるでしょう。
BIG4会計法人をキャリアパスとし、大手コンサルティングファームや外資系企業、PEファンドへの転職も可能です。
#1.:メリットとデメリット
BIG4会計事務所に転職するメリットとデメリットを紹介します。
- 中小では扱えない大企業を相手にした税務が経験できる
- 税務の専門知識を深められる
- 転職時に有効なキャリアパスになる
BIG4会計事務所のクライアントのほとんどが大企業であり、他の会計事務所では担当できないような大口の会計・税務業務に関われます。
難易度は高いですが、難しい税務処理のスキルがつくでしょう。
さらに、BIG4会計事務所に勤めていた経験は、転職時にアピールポイントにもなります。
- 業務が細分化されている
- 激務になりやすい
BIG4ほどの大手になると、チーム分けされて細分化された業務を担当します。そのため幅広い業務を担当したい人には、少々向いていません。
また、案件自体が大きいため激務になりやすく、繁忙期は夜中にまで仕事が及ぶこともあります。
(3)中小会計事務所・税理士事務所
中小会計事務所・税理士事務所も、税理士に人気の転職先です。
企業・個人事業主の税務代行や経理業務や、最近はコンサルティング事業やFAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)を提供している事務所もあります。
記帳代行や税務申告、監査やコンサルティングをメインとした仕事で、BIG4系よりクライアントの規模は小さいですが、幅広い業務に携われるでしょう。
中小会計事務所・税理士事務所をキャリアパスとし、さらに大手のBIG4系の会計法人・税理士法人への転職、同種の会計・税理士事務所への転職も多いです。
#1:メリットとデメリット
中小会計事務所・税理士事務所で働くメリットとデメリットを解説します。
- 転職採用に積極的である
- 担当できる業務の幅が広い
まずメリットは、中小会計事務所や税理事務所は、業務の幅が広く、また税理士の若手が減っていることから売り手市場であることです。
特に20代・30代の採用に積極的なので、狙い目の転職先と言えます。
また、事務所規模が小さくなる分、担当できる業務の幅が広いです。
小規模事務所の場合は、顧問先企業の担当を1人で任されることもあります。
忙しいながら、やりがいを感じられることでしょう。
- 福利厚生が整っていない事務所がある
- 人間関係が難しい
中小規模の会計事務所・税理士事務所は、まだ福利厚生が整っていない所もあります。
また、所長の人柄によって事務所のカラーが全く違い、人間関係によっては働きづらい可能性があります。
求人票の応募要項だけでなく、事務所のカラーについての調査も必要です。
(4)一般事業会社
一般事業会社では、税理士は主に以下の業務を任されます。
- 経理部門の主計業務
- 税務部門の専門業務
経理部門の主計業務を任されることが多く、税理士の知識と経験を十分に活かせるでしょう。
また、企業自体で税務部門を持っている場合は、税務リスクの抽出や分析を行うこともあります。
外資系企業の場合は、日本法人の決算対応やレポーティングがメインです。
一般事業会社をキャリアパスとし、他の一般事業会社へ待遇をあげて転職したり、また経営企画等に関わった人はコンサルティング業界への転職も可能です。
#1:メリットとデメリット
税理士が一般事業会社へ転職するメリットとデメリットを紹介します。
- ライフワークバランスが整いやすい
- 福利厚生が充実している
- 税務の専門家として頼られるやりがい
働き方改革の影響もあり、残業時間は比較的少なめの企業が多いです。
そのため、会計事務所や税理士事務所のように、繁忙期は終電帰りということはほぼありません。
また、一般事業会社は福利厚生の整備が整っている企業が多いのもメリットです。
税務の専門家として採用されることが多いため、周囲から頼られ、やりがいを感じられるでしょう。
- 年収が下がる可能性がある
- 担当部署以外の仕事に関われない
反対にデメリットは、年収が下がる可能性があることです。
特に若手の場合は、会計事務所等よりも年収が低くなり、思うように収入が得られないことがあります。
また、担当部署以外の仕事に関わることはほぼなく、業務が限定的になりやすいです。
経理部門でもルーティンワークがメインとなり、退屈に感じる場合があるでしょう。
(5)金融機関
金融機関では、税理士は以下のような業務を担当します。
- 会計・税務
- 法人向けコンサルティング
- 個人向け資産運用アドバイザリー
金融機関の会計や税務業務は特殊で、一般の会計事務所では得られない業務を習得できます。
また、投資銀行に転職した場合は、法人向けのコンサルティングやM&A業務、また、個人向け資産運用のアドバイザリー業務も担当する場合があるでしょう。
金融機関をキャリアパスとして、大手コンサルティングファームへの転職を考える人も多いです。
#1:メリットとデメリット
税理士が金融機関に転職するメリットとデメリットを紹介します。
- 特殊な税務の業務を担当できる
- コンサル業務の経験がつく
- 年収が上がりやすい
メリットは、金融機関独特の特殊税務に携わることでしょう。
他の金融機関への転職の際に、経験が役に立ちます。
コンサルティングファームへの転職を考えている方も、アドバイザリーの経験はアピールポイントになります。
また、税理士事務所から金融機関への転職は、一般的に年収がアップしやすいです。
今以上の年収を目指して転職する税理士も多いでしょう。
- 税務の内容が特殊で他の業種に活かしづらい
- 投資銀行は結果を求められるので激務になりやすい
金融機関の特殊な税務に携われるのはメリットでもあるのですが、他の業種への転職の際に活かしづらいのがデメリットです。
今後も金融機関へのキャリアを考えているなら役立ちますが、キャリアパスによってはアピールポイントにしづらいでしょう。
また、投資銀行への転職を考えている場合は、仕事環境はかなり激務です。
常に結果を求められるので、ストレスフルな環境になりやすく、仕事が深夜に及ぶことも珍しくありません。
(6)コンサルティングファーム
コンサルティングファームと言っても複数種類がありますが、税理士経験が活かしやすいのは以下のようなコンサルティングファームです。
- 事業再生系コンサルティング
- 財務・会計系コンサルティング
事業再生系コンサルティングでは、財務・会計の知識が必要になり、税理士経験がアピールしやすいでしょう。
また最近は、税理士資格を生かして財務・会計系コンサルティングに転職する方も多いです。
コンサルティングファーム転職後は、別のファームへの転職・PEファンド等への転職をする人が多いです。
#1:メリットとデメリット
税理士がコンサルティングファームで働くメリットとデメリットを紹介します。
- 年収が上がる
- やりがいが高い
- 大手コンサルティングファームや投資銀行へのキャリアパスになる
コンサルティングファームにもよりますが、一般的に年収は上がりやすいと言われています。
今以上の年収を目指すなら、コンサルティングファームへの転職を考えるのも良いでしょう。
また、クライアントの問題を探り、解決する仕事であり、やりがいも感じられるでしょう。
次のキャリアを考えるためにも有効な転職先であり、コンサルティングファームでの業務経験は、転職活動のアピールポイントにもなるでしょう。
- 激務である
- 採用ハードルが高い
コンサルティングファームは一般的に激務で、通年忙しいのがデメリットです。
残業も多くなりがちで、ライフワークバランスは取りづらいでしょう。
また採用ハードルが高く、ファームによっては2年以上の実務経験や語学力などが求められます。
転職エージェントと相談し、しっかり対策をしなければなりません。
3.税理士が転職する理由
税理士が転職する3つの理由を紹介します。
- 仕事の領域を広げたい
- 年収を上げたい
- ライフワークバランスを取りたい
転職に対して迷いがある方は、他の人の転職同期を参考にしてみましょう。
1つずつ説明していきます。
(1)仕事の領域を広げたい
税理士が転職する1つ目の理由は、仕事の領域を広げたいからです。
税理士事務所で勤務していると、どうしても税務のみに仕事が偏ってしまいます。
一般事業会社へ転職して、他の業務をやってみたい、コンサルティングの経験を積みたいなど、キャリアを見据えて適切な経験を積むために転職する税理士が多いです。
(2)年収を上げたい
税理士が転職する2つ目の理由は、年収を上げたいからです。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、30代の税理士の平均年収は551万円となっています。
一方コンサルティングファームの平均年収は、600万円以上と水準が高いです。
また投資銀行等も、激務ながら年収が高くなりやすいでしょう。
今よりもさらに年収を上げたい税理士が、転職を志望するケースが多いです。
(3)ライフワークバランスを取りたい
税理士が転職する3つ目の理由は、ライフワークバランスを取りたいからです。
中小の税理士事務所などは、人数が少ないが仕事は多い状態で、なかなか休みが取れないこともあります。
一般事業会社では、労働環境の整備に力を入れている企業も多いため、残業は少なめの企業も多いです。
残業時間を減らし、私生活にかける時間を確保する目的で転職を考える税理士もいます。
まとめ
今回は、税理士の転職について紹介しました。税理士が最も転職しやすい年代は30代で、税理士資格を持っている人材への需要は高くなっています。
また、20代で経験自体は浅くても、コンサルティングファームや投資銀行等、ポテンシャル採用を行う分野では早く動き出すに越したことはありません。
それぞれの転職先の概要やメリット・デメリットを紹介したので、あなたの望むキャリアプランや条件に合った職場を見つけてみましょう!
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