【ステップアップのための退職が多い!】コンサル業界の離職率について解説
「コンサルは仕事がハードで離職率が高いって本当?」
「コンサル業界の離職率が高い理由は?」
「企業のドクター」として活躍するコンサルタントになりたいけれどど、「長時間労働」「ハードワーク」などの昔のネガティブなイメージからコンサル業界の離職率を知りたいという方は少なくありません。
実際、コンサル業界の離職率だけを見ると確かに一般の企業よりも高めになっていますが、それにはコンサル業界・コンサルタントの仕事ならではの理由があります。
そこで本記事は、コンサル業界の離職率や、離職率が高い4つの理由と合わせて、コンサル業界の変化についても解説していきます。
コンサル業界の離職率や勤続年数を見ると最初は「え?」と戸惑いを感じるかもしれませんが、その理由を知れば、コンサル業界がいかに魅力的な業界であるかがわかり、高い可能性を持つコンサルタントの仕事に更に興味を持てることでしょう。
1.コンサル業界の離職率は高め
コンサル業界へ飛び込む前に知っておきたい、コンサルタントの離職率と平均勤続年数、そして退職事由について解説します。
- コンサル業界の離職率と平均勤続年数
- 一般企業とコンサルの退職事由は大きく異なる
コンサルの離職率や平均勤続年数だけを見ると少し不安になりますが、その退職事由を見ればコンサル業界により希望と期待を持てるようになることでしょう。
次に1つずつ解説していきます。
(1)コンサル業界の離職率と平均勤続年数
2020年の一般的な事業会社における離職率は14.2%ですが、コンサルティングファームの離職率はおおよそ20%程度といわれています。
コンサルタントは高年収と高いステータスから転職市場でも人気の高い転職先ですが、離職率だけを見ると他の業種よりも高めです。
また、コンサル業界における平均勤続年数は3~6年であるのに対し、一般的な事業会社では平均勤続年数は12.2年となっており、コンサル業界の勤続年数は全体的にかなり短い傾向にあるといえるでしょう。
(2)一般企業とコンサルの退職事由は大きく異なる
一般的に、離職率が高くて社員の平均勤続年数も短い企業に対しては「人が定着しないなんてよほどブラックなのでは?」「激務なのでは?」「ひどいパワハラがあるのでは?」などのネガティブなイメージを持ってしまう方もいるかもしれません
しかし、コンサル業界はそういった劣悪な労働環境が原因ではない自主退職が多いといわれています。
確かにこれまでコンサル業界も長時間労働・ハードワークのイメージが強い業界でしたが、近年のコンサル業界は働き方改革の実践やダイバーシティを重視し従業員が働きやすい環境づくりを積極的に実施しています。
コンサルタントのワークライフバランスを重視する傾向が強く、率先して残業時間を制限したり休暇を充実させるファームが増えているため、コンサル業界でハードワークを理由として離職する人は少なくなっています。
また、一般企業の退職事由に多い「パワハラ」に関しても、コンサルティングファームは基本的にはアサインされたプロジェクトによって上司や先輩が次々にかわっていくため、一般の事業会社のように固定化した直属の上司による地位や権力を乱用した威圧的・継続的なハラスメントが行われるということが発生する可能性が低いと言われています。
シンプルに数字だけを見るとコンサルティングファームの離職率が一般的な事業会社よりも高く、勤続年数も短い傾向にあるということは事実ではありますが、コンサルタントがファームを辞める理由に関しては一般的な事業会社とは異なる背景や理由があると考えられます。
2.コンサル業界で離職率が高い理由
ハードワークやパワハラの問題が一般的な企業よりも少ないといわれているにも関わらず、コンサルコンサル業界で離職率が高いのでしょうか。
その理由は4つ挙げられます。
- 自身のキャリアに明確なプランやビジョンを持っている人が多い
- 転職が次の仕事のマイナス要素にならない
- 魅力的な『アルムナイ』がある
- ファームによって取り組む仕事が大きく変わる
コンサル業界の離職の理由は、コンサル業界の独特な風潮・カルチャーが大きく関係しています。
次に1つずつ見ていきましょう。
(1)自身のキャリアに明確なプランやビジョンを持っている人が多い
コンサル業界の離職率が高い1つ目の理由として、自身のキャリアプランやビジョンを明確に持っている人が多いことが挙げられます。
もともと「企業のドクター」といわれるコンサルタントは優秀な人材が多く、コンサルタントの仕事柄、法律や経済、経営等の知識に加えてクライアント企業の業界の知識や情報、最新の技術やテーマなどについて常に勉強を欠かすことができません。
そのため、コンサルタントには強い向学心と努力意欲を持ち、身に付けたスキルを活かしてさらに上のステージを目指す成長志向を持つ人が多いといわれています。
自身のキャリア構築に熱心な人が多い上に、コンサル業界はより良い条件を提示してくれるファームに移ることが当たり前であり、転職に対する心理的なハードルももともと低いため、現在のファームよりも自分を成長させる機会を設けられる別のファームや事業会社があれば率先して転職を考える人も少なくありません。
こういった状況から、「仕事ができなくて退職させられる」というよりも「コンサルタント自身がより自分の成長が期待できる環境を求めて自主的に退職する」というのが実情にあります。
よって、自分のキャリアプランに合わせて転職する人が多いことが離職率の数字に表れているといえるでしょう。
(2)転職が次の仕事のマイナス要素にならない
コンサル業界の離職率が高い2つ目の理由は、コンサルタントにとって転職が次の仕事のマイナス要素とならないことが挙げられます。
一般的な事業会社では、短期間で職を変わっている転職希望者に対して面接官が「堪え性がない人かも」「すぐに辞めてしまうかも」と選考時にネガティブな受け取り方をするところがまだ残っているようです。
しかし、基本的にコンサルタントの平均勤続年数が数年という短いスパンであるコンサル業界においては転職の回数や勤務期間の短さは転職時の評価においてマイナスとなることは少ないようです。
逆に、これまでどんな企業やファームに勤めていたか・そこでどんな成果を上げていたかなど経歴がそのままそのコンサルタントの能力・スキルの証明や財産になるため、次の仕事を選ぶ上で転職回数や在籍時間などがプラスとなることもあるようです。
また、コンサルタントの仕事はチームでプロジェクトに取り組むことが多いものの基本的には個人技であり、成果もコンサルタント本人の力量に大きく左右するため、一般的な事業会社での実績よりも自分の実績を明確化できアピールしやすいという特徴もコンサルタントの転職のハードルを下げている大きな要因と考えられます。
このように、コンサル業界は次のキャリア実現に向けた自主退職が多いだけでなく、転職が次の仕事のマイナス要素になるどころか財産になる事もコンサルタントの離職率を上げている一因と考えられます。
(3)魅力的な『アルムナイ』がある
コンサル業界の離職率が高い3つ目の理由は、各ファームに魅力的な『アルムナイ(卒業生)』があることで転職に対して積極的になることができることが挙げられます。
『アルムナイ』とは過去に直接的な雇用関係にあった人の集まりであり、外資系・戦略コンサルティングファームのマッキンゼーやボストン・コンサルティング・グループ、外資系・総合コンサルティングファームのアクセンチュアなどの『アルムナイ』が特に有名です。
コンサルタントは短い期間でもファームで働けば、転職後も「卒業生」の立場でそのファームが持っている『アルムナイ』を利用できるようになります。
そうすると『アルムナイ』ネットワークで新たな人脈やビジネスチャンスを得ることができるという大きなメリットを享受できるだけでなく、中途採用時に『アルムナイ』に優先的に情報を提供する『アルムナイ採用(退職者再雇用)』を利用できるようになるなど、『アルムナイ』ネットワークに入ることで得られる利益ははかり知れません。
事業会社と比べると平均勤続年数が基本的に短く、人の流動が激しいコンサル業界では、ファームのOB・OGによって構成された『アルムナイ』のネットワークは規模も大きく、人脈も豊かであり、結束力も高いです。
つまり、コンサルタントは転職の回数が増えるほど自身が帰属できる『アルムナイ』の数が増え、自身の仕事やキャリアアップを今後有利に運べるようになることも、コンサルタントの転職への心理的なハードルを下げ、離職率を上げている一因と言えるでしょう。
(4)ファームによって取り組める仕事が大きく変わる
コンサル業界の離職率が高い4つ目の理由として、コンサル業界ではファームによって取り組むプロジェクトの規模や内容が大きく変わることが挙げられます。
コンサルタントとしてまだ経験も実績もない間は自分がやりたいことがよくわかっておらず、とにかく仕事を覚えることで手一杯・いろんな仕事を手あたり次第チャレンジするという人が多いのですが、様々なプロジェクトを経験して徐々に自分がやりたいことが明確になってくると、その分野・領域に強いファームで思う存分力をふるいたいと思うようになっていくものです。
また、規模が小さいファームよりも大きなファームのほうが一流企業との取引が多く、大規模な案件に取り組める機会も増えるため、新聞やインターネットのニュースで取り上げられるようなプロジェクトを手掛けたければ今よりも大きなファームへの転職しようと思うのも当然のことです。
このように、コンサルタントは自分の成長に合わせて、自分の興味や関心、得意分野や強みにマッチした仕事を選べるなど、自分次第で仕事の選択肢の幅をどんどん増やしていける魅力的で発展性のある仕事です。
コンサル業界において「仕事がハードである」「精神的にきつい」などのネガティブな理由で転職する人もいないわけではありませんが、それよりも自身のキャリアプランに基づいて「もっと自分のスキルを活かしたい」「大きな規模の仕事に取り組みたい」などのポジティブな理由でステップアップするために転職をする人が多いです。
また、コンサル業界全体でも自分の能力を活かせて成長できるファームへの転職を推奨する風潮が強いことから、コンサルタントの離職率も一般的な事業会社よりも高くなるのは当然の流れと言えるでしょう。
3.コンサル離職率は減少傾向に
基本的にコンサル業界は転職をすることで得られるメリットが一般的な企業よりも多いため、転職をする人が多く離職する人も多いでしょう。
しかし、最近ではコンサルティングファームの姿勢・取り組みの変化から、コンサルの離職率について少しずつ変化が見られるようです。
- 労働環境の更なる改善
- 人材育成・教育制度の充実化
現在、コロナ禍を経てAI・DXといった新しいテクノロジーの導入など多くの企業が新たな経営判断を求められる局面を迎えている日本では、様々な規模・業界の企業からのコンサルティングニーズが高まっており、コンサル現場では慢性的な人手不足が問題となっています。
商品やサービスを商材とする一般的な事業会社と異なり、コンサルティングファームにとって最大の商材であり財産である優秀な人材の流出はファームの売上・経営にとっては手痛い損失となるため、人材の流出を防ぎ確保して離職率を下げることは各ファームにおける最重要な課題の1つとなっています。
コンサルタントの定着率を上げ、離職率を下げるためのファームの取り組みについて1つずつ解説していきます。
(1)労働環境の更なる改善
1つ目の変化は、労働環境の更なる改善を行うファームが増えていることです。
コンサルティングファームでは、大きなプロジェクトや期間の短いプロジェクトや難易度の高いプロジェクトにアサインされると、その期間はどうしても多忙となってしまいます。
その改善対策として、例えばプロジェクトとプロジェクトの間に多忙期間でとれなかった休暇を長期間でとったり、結婚や出産・育児、介護などコンサルタントのプライベートな事情による勤務スタイルの見直し(時短勤務・在宅勤務・フレックス勤務など)が行われています。
また、プロジェクト期間外の残業の制限を行うなどワークライフバランスを取るための取り組みを行い社員の定着を狙うファームが増えています。
また、PwCコンサルティングのように保活コンシェルジュ制・社内の保育所の完備など子育て世代の男性・女性コンサルタントが安心して働ける環境づくりに注力するファームもあります。
他にも、AIを導入してデータ収集や分析などを任せることでコンサルタントの負担を軽減する取り組みを行うファームも少なくありません。
コンサル業界では、離職率を下げるために給与・昇進・昇給面だけでなく福利厚生などを手厚くして社員満足度を高めることで人材の流出を防ぐ取り組みを多くのファームが行う傾向が強くなっています。
(2)人材育成・教育制度の充実化
2つ目の変化は、人材育成・教育制度の充実化で社員定着を図るファームが増えていることです。
もともとコンサル業界は、向学心や向上心が強く、自身のスキルアップやキャリア構築に積極的に取り組む人が多い業界です。
そんな中、ファームの重要な財産である優秀なコンサルタントの社外への流出を防ぐために、メンター制度やトップクラスのコンサルタントによる研修や教育、MBAの資格取得のサポートなどの制度を充実させるなどコンサルタントのスキルアップや資格取得を会社全体でフォローする制度を導入するファームが増えています。
基本的に社員の離職率が高く人の流動性の高いコンサル業界ではありますが、以前と比べると入社した人を育てようとするファームが増えているだけでなく、育てた人材が満足して長く働けるような環境を用意するファームが増えており、実際にコンサルタントの離職率を大幅に下げて優秀な人材の定着により業績アップを実現しているファームもあります。
優秀なコンサルタントは引く手あまたとなるコンサル業界では、優れた人材を確保・維持するために今後ますますファームの労働環境は改善されていくと考えられるため、コンサルタントにとっては働きやすいコンサルが増えていくと考えられます。
まとめ
コンサル業界全体としては、離職率は一般的な事業会社と比べて高く、平均勤続年数が短いのは紛れもない事実です。
コンサル業界は離職率が高いと聞くと不安を感じる人も多いかもしれませんが、一般企業のような「ブラック」「パワハラ」「安月給」などのネガティブな理由でコンサル業界の離職率が高いわけではなく、「キャリアアップしたい」「自分を実力を試したい」「さらに上の環境で活躍したい」などポジティブな理由で転職に前向きな人が多いことやコンサル業界独自のカルチャー・風土が原因であることが多いため、コンサル業界への転職の際には劣悪な労働環境や過酷な人間関係などを心配をする必要は全くありません。
実際にコンサル業界で働けば一般的な事業会社よりも人の出入りのある中で仕事をしていくことになるのは間違いありませんが、逆に言えばコンサル業界ほど自身のキャリアの選択肢が広く、転職することで自分の希望に合わせて着実にキャリアを積み上げていきやすい環境の中で働ける業界はないといえるでしょう。
また、近年はコンサル業界全体で優秀な人材を確保するためにファームの労働環境や待遇の改善も次々に進められているため、今後はさらにコンサルタントにとってはより良い条件・働きやすい環境の中で働けるようになると考えられます。
コンサルタントの仕事は、課題を抱えているクライアント企業を救うだけでなく、それによって社会もより良く変えていける魅力的な仕事です。
コンサルの仕事に興味のある方は、離職率の高さや勤続年数の短さの数字の裏にあるコンサル業界の真実・魅力を理解し、ぜひチャレンジしましょう。
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