監査法人の転職市場は大きく変化?監査法人の中途採用事情を徹底解説
「公認会計士が活躍する監査法人ってどんな業務を行うの?」
「監査法人に転職したいけれどどのようなルートがあるの?」
監査証明業務をメインで行う監査法人は、企業や社会が円滑に動くために不可欠な存在であり、一般企業に比べて高い年収も保証される魅力的な職場です。
そんな企業にとって大変重要なパートナーとなる監査法人への転職ですが、コロナ禍以降、監査法人への転職市場は以前のように甘くありません。
そこでここでは監査法人の中途採用事情と合わせて、監査法人の採用ルートや業務内容を合わせて解説しています。
この記事を読めば監査法人への転職を考える際に役立つことでしょう。
1.監査法人の中途採用事情
まず、監査法人の現在の中途採用事情を解説します。
- 監査法人の中途採用者の割合
- コロナ禍で中途採用を控える監査法人も多い
長引くコロナ禍で、監査法人の中途採用状況も大きく変化しています。
次に1つずつ見ていきましょう。
(1)監査法人の中途採用者の割合
中途採用比率は転職者にとってその企業に応募するかどうか決めるための重要な参考となるものですが、中途採用の割合を明示している監査法人はまだそれほど多くはありません。
中途採用の割合を公開している数少ない監査法人の1つに、大手監査法人(BIG4)の1つであるPwCあらた有限責任監査法人があります。
PwCあらた有限責任監査法人は、全職員2,892名のうち公認会計士が877名、会計士補・全科目合格者が642名在籍しており、有資格者のうち1割強にあたる158名が中途採用となっています。
ただ、一般的にほとんどの公認会計士試験合格者は大手監査法人の定期採用に流れてしまうため、新人の人材確保が難しい準大手・中小規模の監査法人のほうが必然的に中途採用割合が多くなります。
そのため、中途採用者の割合は、大規模な監査法人よりも準大手・中小規模の監査法人の方が多いとみてよいでしょう。
(2)コロナ禍で中途採用を控える監査法人も多い
以前は「売り手市場」といわれた監査法人の転職市場ですが、コロナ禍以降は以前のように甘くないといわれています。
もともと監査法人は離職率が高く、激務のために7年以内で50%程度が離職するといわれていました。
特にBIG4など大手監査法人でその傾向が強かったのですが、現在はAIの導入による業務の効率化・働き方改革・職場環境の改善などで離職率は徐々に下がってきています。
その結果、ある程度の人員確保ができるようになり、以前は人材確保を経営上の重要戦略としていた大手監査法人に中途採用を控える傾向がみられます。
その一方で、準大手や中小規模の監査法人では人員不足を解消するために現在も積極的に中途採用をすすめているところもあります。
中小規模の監査法人は少数精鋭である分一人ひとりが担当する業務の幅も広く激務になりがちですが、その分様々な経験を積むことができるというメリットもあります。
そのため、転職をするなら最初から中途採用を控え気味の大手監査法人を狙わず、まずは中小規模の監査法人で実績・キャリアを着実に積み、大手の不定期採用があればチャレンジするのが良いでしょう。
2.監査法人に採用されるには
監査法人に採用されるには、3つのルートがあります。
- 公認会計士試験に合格する
- 公認会計士として転職する
- アドバイザー等として転職する
次に1つずつ解説していきます。
(1)公認会計士試験に合格する
1つ目の監査法人に採用されるルートは、公認会計士試験に合格するルートです。
監査法人は公認会計士試験の合格発表時期に合わせて定期採用を行っており、試験合格者は採用に有利だとみられます。
公認会計士合格者の採用は、公認会計士試験の合格発表当日から募集がスタートし、選考から採用決定まで2週間程度と短期決戦です。
試験合格後に希望する監査法人に就職するなら、予め狙いの監査法人のカラー・社風にマッチした面接対策を行っておくことが内定を得る鉄則です。
(2)公認会計士として転職する
2つ目の監査法人に採用されるルートは、公認会計士として経験・実績を積んだ後によりランクの上の監査法人に転職するルートです。
不定期採用では即戦力となる人材が求められるため、資格に加えて監査法人のニーズに合致した+αが必要となります。
例えば、外資系・海外案件の多い監査法人ならば高い語学力・海外の会計知識がある、M&Aに力を入れている監査法人ならばM&A実績が豊富である等、希望する監査法人の得意分野や重点分野に役立つスキルがあるとかなり有利となります。
(3)アドバイザー等として転職
3つ目の監査法人に採用されるルートは、アドバイザー等として採用されるルートです。
業務内容の都合上監査法人は公認会計士が中心ですが、無資格でもアドバイザー専門職員等として働くことができます。
BIG4では人員総数に対する公認会計士比率は30〜55%、公認会計士と合格者を合わせても比率は50〜75%であり、無資格者でもBIG4に採用されるチャンスがあります。
公認会計士・合格者ではない無資格者は、次の資格や経験があると監査法人で採用されやすくなるので資格取得や経験の蓄積を目指しましょう。
- USCPA(米国公認会計士)やACCA(英国勅許公認会計士)の有資格者
- 語学系資格
- コンサルティング・アドバイザリーなどの経験者
- 会計の経験者
特に、最近ではM&Aの活発化によりアドバイザリー業務に力を入れる監査法人も増え、M&A案件の経験を持つスタッフを意欲的に募集しているところも増えています。
また、公認会計士の補助業務である会計補助を行う場合は、税理士事務所や金融業界などへの勤務実績も高く評価されます。
3.監査法人の業務内容
最後に、監査法人の業務内容について解説します。
- 監査証明業務
- 非監査業務(非監査証明業務)
監査法人は財務・経理の会計の専門家として主に会計監査を行いますが、それ以外にもアドバイザリー・コンサルティング業務など幅広い役割も担っています。
M&Aなどが国内でも増加傾向にある今、独立性のある第三者的な立場としての監査法人の役割は今後一層重要となることでしょう。
(1)監査証明業務
監査証明業務とは、その名の通り、企業の財務諸表・計算書類などの適正性を公正な立場で公認会計士がチェックし、内容に誤りや粉飾が無いことを保証する業務です。
各種契約書や請求書・領収書・通帳の確認、売上や利益の分析とチェックなど、クライアント企業の期中取引の確認を行い、決算期だけではなく年間を通して往査していきます。
監査業務には、金融商品取引法やその他の政令などで定められた企業の監査を行う「法定監査」と、法定監査のように監査が定められている企業以外の監査を行う「法定監査以外の監査」があります。
また、経営者が作成する内部統制に関する報告書(内部統制報告書)が正しいかどうか客観的立場から保証する内部統制監査業務も含みます。
ちなみに、公認会計士の独占業務である監査はチームで行われることが多く、それぞれが役割を負って実施することになります。
(2)非監査業務(非監査証明業務)
監査法人では監査以外の業務も行っています。
監査業務以外の業務を広く差す非監査業務の内容は幅広く、専門的知識を活かしてアドバイザーとしてクライアント企業をサポートしていきます。
- 株式公開支援業務 (IPO)
- 財務デューデリジェンス
- M&Aにおける被買収企業の財務諸表等の調査
- IFRS(国際会計基準)導入支援
- CSR(企業の社会的責任)の指導・助言
- システム監査
- 決算早期化のアドバイザリー など
また監査法人は、監査証明業務を以外の業務に加えて会計の専門家としてクライアントに対し企業の経営に関する相談に応じるコンサルティング業務(2項業務)も行います。
ただし、独立性・公平性を保つため、監査証明業務を行うクライアントに対しては非監査業務は行うことはできません。
まとめ
以前は売り手市場といわれた監査法人の転職市場ですが、コロナ禍の影響により監査法人の活動も縮小している傾向があります。
しかし、逆に人材確保のチャンスとしキャリア採用を積極的に行っている準大手・中小規模の監査法人もあります。
ぜひ公認会計士の資格をお持ちなら自分の能力・価値を高く評価してくれる監査法人に転職し、会計士としてのキャリア・実績を増やしていきましょう。
また、資格を有していなくても監査法人で活躍するチャンスはあります。
この記事を参考にして監査法人が必要とするスキル・経験を携え、転職にチャレンジしてみてください。
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