4大監査法人への転職で気になる特徴は?メリット・デメリットや選び方を解説
「4大監査法人への転職を考えているが、それぞれがどのような特徴を持っているのか知らない」
「どの法人を選んで良いのか分からない」
4大監査法人という名前を聞いたことがあっても、それらの会社について、詳しくは知らないとお悩みではないですか?
ここでは、4大監査法人それぞれの特徴や、転職先としての4大監査法人の選び方をご紹介します。
この記事を読めば、転職先にどこを選べば良いのか目指す企業が分かるようになります。
是非転職をする際の参考にしてみてください。
1.4大監査法人とは?
4大監査法人とは、日本においてグローバルな4大会計事務所と提携している監査法人を指す際に用いられる総称です。
日本で上場している会社はほとんどが4大監査法人の監査を受けていると言っても過言ではなく、企業から厚い信頼を得ており、監査法人として揺るぎない地位を築いています。
1.EY新日本有限責任監査法人
2.有限責任あずさ監査法人
3.有限責任監査法人トーマツ
4.PwCあらた有限責任監査法人
1つずつ順に説明していきます。
(1)EY新日本有限責任監査法人
設立 | 2000年4月1日 |
資本金 | 1,088百万円 |
人員数 | 公認会計士2,987名 公認会計士試験合格者数等1,036名 その他1,294名 合計5,317名 |
主事務所所在地 | 東京都千代田区有楽町一丁目1番2号 東京ミッドタウン日比谷 日比谷三井タワー |
主な顧客企業 | みずほFG、日立、東芝、キヤノン、日産、東レ等約 |
公式HP | https://www.shinnihon.or.jp/ |
EY新日本有限責任監査法人は、ロンドンを拠点として会計・税務のサービスを提供する、アーンスト・アンド・ヤング(EY)と提携している監査法人です。
銀行業界の監査では半分以上のシェアを占めており、監査の品質管理体制の更なる強化、および効率的でより深度ある監査を推進するため、公認会計士の監査業務のサポートを行い、保証サービスを提供しています。
研修制度が充実しており高い専門性を求められる風土を持っていますので、自己成長を実感しながら仕事ができるでしょう。
(2)有限責任あずさ監査法人
設立 | 2003年2月 |
資本金 | 300百万円 |
人員数 | 公認会計士3,036名 公認会計士試験合格者等1,040名 監査補助職員1,124名 その他職員727名 合計5,927名 |
主事務所所在地 | 東京都新宿区津久戸町1番2号 |
主な顧客企業 | 三井住友FG、NTT、住友商事、オリックス、新日鐵住金、パナソニック等 |
公式HP | https://home.kpmg/jp/ja/home.html |
有限会社あずさ監査法人は、世界154カ国に約20万人の専門家を持ち、監査や税務、コンサルティングを主力にしているKPMGのメンバーファームです。
電鉄会社の監査に関して半数以上のシェアを獲得しており、特に大阪や広島など、西日本エリアに強みを持っています。
有限会社あずさ監査法人では、多くの金融機関と連携する金融サービス仲介業者と、自社の金融商品を取り扱う金融サービス仲介業者を探す金融機関との、マッチングを支援するサービスへの取り組みにも注目です。
(3)有限責任監査法人トーマツ
設立 | 1968年5月 |
資本金 | 1,112百万円 |
人員数 | 社員(公認会計士)498名 特定社員60名 職員公認会計士2,683名 公認会計士試験合格者等1,036名 その他専門職2,620名 事務職89名 合計6,986名 |
主事務所所在地 | 東京都千代田区丸の内3-2-3 丸の内二重橋ビルディング |
主な顧客企業 | 三菱UFJ、三菱商事、三井物産、ソフトバンク、イオン、電通等 |
公式HP | https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/audit/audit.html |
有限責任監査法人トーマツは、世界最大の会計事務所、デロイト・トウシュ・トーマツと提携しています。
金融や小売分野に強く、5大商社の内の三菱商事・三井物産・伊藤忠商事の3つの監査を担当するなど、商社の監査が得意分野です。
経営管理における課題解決のために、グローバル規模でリスクアドバイザリー業務を行い、企業の持続的成長のサポートに力を入れています。
(4)PwCあらた有限責任監査法人
設立 | 2006年6月1日 |
資本金 | 100百万円 |
人員数 | パートナー168名 公認会計士904名 会計士補・全科目合格者587名 USCPA・その他専門職員1,292名 事務職員138名 合計3,089名 |
主事務所所在地 | 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング |
主な顧客企業 | トヨタ、ソニー、東京海上、ユニ・チャーム等 |
公式HP | https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/assurance.html |
最後にご紹介するのは、世界最大級のプロフェッショナルサービスファームであるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)のメンバーファーム、PwCあらた有限責任監査法人です。
トヨタ自動車やソニーなど大手企業の監査を担当しており、4大監査法人の中では一番歴史が浅く、人員数なども少ないながら、着実に業務に取り組む姿勢が評価されています。
人工知能(AI)をはじめとするテクノロジーツールを用い、高品質な監査を実現、次世代のデジタル監査への取り組みを見せている監査法人です。
2.4大監査法人の選び方
4大監査法人には、それぞれ得意分野や社風、そしてもちろん報酬給与に違いがあります。
4大監査法人への転職を考えた時、一体何を見て選べば良いのでしょうか?
ここでは、それぞれの企業を選ぶべき人についてご紹介します。
法人名 | 得意分野 | 監査以外の業務 | 報酬給与 | 社風 |
新日本監査法人 | 銀行業界不動産や建築部門 | 監査業務における保証サービス | 803万円 | 安定志向で年功序列を重んじる |
あずさ | 電鉄会社 | 金融機関向けサービス | 725万円 | チームワークが重視され協調性が高い |
トーマツ | 金融や小売業、商社 | リスクアドバイザリー | 757万円 | 体育会系で上下関係が重んじられている |
あらた | 東芝やトヨタなど大手 | ガバナンスに関係した業務 | 889万円 | 実力主義で外資系 |
(1)EY新日本有限責任監査法人を選ぶべき人
新日本監査法人は、監査報酬が長年日本一の企業で監査に特に強いので、将来的に監査業務をずっと継続していきたいという方が選ぶと良いでしょう。
特に、メーカー、銀行、電力、不動産・建設分野の監査に関わりたい方、また、公会計や学校法人の数が他の監査法人よりも多く、それらの業種に関わりたい方も新日本監査法人がおすすめです。
外資系の風潮が強いと思われがちですが、「監査と言えば新日本法人」と例えられるほどの歴史を持ち、社風としては安定志向で年功序列が重んじられる傾向が見られます。
(2)有限責任あずさ監査法人を選ぶべき人
売上が1兆を超えるような超大企業のクライアントや電鉄会社のクライアントに携わりたいという人は、あずさ監査法人がおすすめです。JR東日本もあずさ監査法人の監査を受けています。
女性が働きやすい環境をどこよりも整える姿勢を持つ監査法人のため、ライフスタイルが変わっても、産休や育休を経て、長く働いている女性も多いようです。
監査法人は激務と言うイメージが強いですが、あずさ監査法人は働き方改革も取り入れており、水曜日は夜8時、それ以外の曜日は夜9時にはパソコンがシャットダウンし、深夜残業が出来ない仕組みを作っています。
残業が無くなっても仕事量が減るだけではないため、限られた時間でどうやりくりをしていくか、時間の使い方が重要になる企業と言えるでしょう。
(3)有限責任監査法人トーマツを選ぶべき人
監査法人トーマツは、商社の監査がしたいと言う人や、他法人よりも非監査業務の収入割合が大きいため、IPOやコンサルティング業務に携わりたいと言う人におすすめです。
社風としては体育会系の雰囲気が強く、上下関係が重んじられており、「上位者にいかに気に入られるか」で社内の評価が変わります。
四半期ごとや1つのジョブが終了した時に個人のパフォーマンスが測定されるため、仕事を待つ姿勢ではなく、取りに行く積極的な姿勢を持つ人が評価に繋がるでしょう。
(4)PwCあらた有限責任監査法人を選ぶべき人
あらた監査法人は外資系と言うイメージが強く、実際にクライアントも外資系企業が多いため、海外クライアントとの業務に特に興味がある方が良いでしょう。
他法人と比べると歴史も浅く、規模も小さいため全体の業務収入も少なく、非監査報酬の業務収入の割合が高い傾向があります。
平均的な報酬給与は他法人よりも高い傾向にありますが、完全実力主義であるため、同期入社であっても、給与が高い人と低い人の差が顕著です。
年齢に関わらず、早くステップアップするために日々取り組めるという人にとてもおすすめと言えますね。
3.4大監査法人のメリット・デメリット
4大監査法人に転職するメリット、またはデメリットについて見ていきましょう。
(1)4大監査法人のメリット
まずは、平均年収が高いという点がメリットです。
4大監査法人の報酬給与は、あらた監査法人が一番高く889万円、続いて新日本監査法人が803万円、トーマツ監査法人が757万円、あずさ監査法人が725万円と算出されています。
これに加えて一人あたりの賞与を加えると、800万円〜900万円の年収となり、日本の年代を問わない平均年収400万円と比べると、かなり高いことがわかります。
更に、業務をこなす内に経営の知識が得られるという点もメリットに挙げられます。
4大監査法人は業種の違いはあれど、どこも規模の大きな企業の監査を請け負っており、それらの会社が健全な経営を行っているかを監査していくうちに、経営のノウハウを得ていけるのです。
得た経営に関する知識は、次の監査に役立てることができますし、監査法人で働いた後、自身のキャリアを積むために色々な選択肢を検討する際に、大きな力になります。
(2)4大監査法人のデメリット
4大監査法人への転職は、メリットだけではありません。
担当する企業が巨大な規模であった場合、自身が担う監査は、事業全体の一部だけであることが考えられます。
そのため、全体像が見えないまま進んでいくこともままあり、不安感を抱える場合がある、という点が、デメリットと言えるでしょう。
また、繁忙期である4月・5月は激務と言われており、体力的、精神的にも消耗することが多いです。
4.4大監査法人への転職で求められるもの
転職希望社が転職を希望していても、4大監査法人が求めているスキルを持っていなければ、転職試験に通らない可能性も十分にあります。
1.ヒアリング力
2.英語力
4大監査法人への転職で求められる2つの項目について見ていきましょう。
(1)ヒアリング力
4大監査法人の転職にはヒアリング力が求められます。
公認会計士がクライアント企業の監査を行う際には、基本的には有価証券報告書や財務諸表などの書類に基づいて行います。
しかし、書類だけでは不明な点については、クライアント企業に追加の資料や調査の依頼や、書類の内容に関して説明を求めるケースも多くあり、 そのような際に円滑にコミュニケーションを行う能力が必要です。
特に、聞き出したい情報を相手から入手できるヒアリング力は、重要な能力と言われています。
(2)英語力
グローバル化により、国際会計基準を採用する企業が増えているため、英文の財務諸表などを読み込むことができる英語力は、会計士として、特に4大監査法人で働く上で必須の条件と言えます。
4大監査法人のクライアントには、外資系企業も多くあり、 外資系企業のマネージャークラスとは英語でやり取りする機会も増えているため、ビジネストークも含めた高い英語力が必要です。
採用条件や昇格条件にTOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)600点〜700点以上と掲げている企業も存在します。
まとめ
会計士のトップ4である4大監査法人は、設立から人員数、主な顧客企業など、それぞれ特徴を持っています。
それらの基本的な特徴を把握した上で、転職先にどの監査法人を選んだら良いのか、十分に検討しましょう。
4大監査法人には、メリットもあれば、デメリットも存在します。
転職をして自分自身でどんなキャリアを歩んでいきたいのか、どのような企業とか変わって仕事はしたいのか、日本的な企業で安定して働きたいか、外資系で実力勝負でチャレンジしていきたいかなど、身を置きたい環境はどんなものなのかしっかりと見つめ直し、自分に合った監査法人への転職を行いましょう。
今回ご紹介した内容を是非参考にして、転職活動に役立ててください。
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