事業再生M&Aの4つの手法と事業再生コンサルタントの転職事情
「M&Aによる事業再生とはいったいどんなものがあるのだろう」
「事業再生M&Aに携わるコンサルタントの転職市場はどうなっている?」
後継者問題・コロナ禍など山積した問題を抱える中小企業が多い日本では、年々事業再生を必要とする企業が増え、その手段として事業再生M&Aが頻繁に利用されるようになっています。
急増する事業再生M&A案件を手掛けるM&A仲介会社やM&Aアドバイザリー、FAS等も増えていますが人員不足で積極的に中途採用を行っているところも多く、高年収もあって転職市場でも特に活発な業種となっています。
そこでここでは、事業再生M&Aにおいて、日本における事業再生の現状と事業再生コンサルタントの転職事情、事業再生M&Aの4つの方式について解説します。
この記事を読めば、一つの企業を救うだけでなく日本の経済を支えることにつながる重要な事業再生M&Aに関わる事業再生コンサルタントの仕事に興味が湧いてくることでしょう。
また本記事を読む前に、事業再生に関わるM&A仲介やFASについての基本情報など、詳しく知っておきたいという方はこちらをご覧ください。
1.M&Aによる事業再生とは
まず、事業再生・事業再生M&Aの業務内容や業界の状況などについて解説します。
- 事業再生とは?3つの手段
- M&Aによる事業再生件数は増加傾向
- 事業再生M&Aの転職市場は最もホット
次に1つずつ見ていきましょう。
(1)事業再生とは?3つの手段
事業再生とは危機に陥った企業が事業の立て直しを図ることです。
具体的には、採算事業の存続や強化・不採算事業の見直しや切り離しなどの改革によって事業の再建を進めていきます。
業績不振や倒産の危機に陥った企業が最悪の事態(廃業・倒産)を避けて再生するためには次の3つの手段があります。
- 自力再生 ・・・経営者はそのままで債権放棄・第三者からの資金援助などを受けることなく、事業整理や経営革新を行って経営の健全化を目指し、自力で再生を目指す方法。
- 金融支援による再生・・・債権者の協力を得て債務整理を行い、再生を目指す方法。債権者と債務者の合意をもとに進められる「私的整理」と、法律に定められた手続きに沿って進められる「法的整理」がある。
- スポンサーによる再生・・・外部からの支援を受けて事業再生を図る方法。金融機関からの借り入れ、スポンサー企業に助けを求めて再生を行うもので、代表例はM&A(事業再生M&A)。
上記の3つの事業再生方法が不可能な場合や企業が持ちこたえられなくなった場合、残念ながらその企業は廃業となります。
廃業となると従業員・取引先、社会などにも多大な悪影響を与えることになるため、崖っぷちの経営者の迅速な判断・対応が非常に重要です。
ちなみに、現在の日本で特に増えているのが、3つ目のスポンサーによる再生です。
不採算事業を売却して採算事業に資本を集中させて立て直しを図る、資金力のある企業(スポンサー)に買収されることで経営基盤の強化・財務状況の安定ができるなどより効率的に事業の再建を進めることができるからです。
(2)M&Aによる事業再生件数は増加傾向
M&Aを利用した事業再生は、現在国内でも増加傾向にあります。
これまでは旧カネボウ株式会社など大企業で行われることが多かった事業再生M&Aですが、後継者不在や経営者の高齢化、コロナなどの影響も相まって特に中小企業で不採算事業を売却するM&Aによって事業再生を図るケースが増加しています。
現在では、事業の選択と集中で効率的に事業再生を図ることができるM&Aは事業再生手段として真っ先に上がるほど広く受け入れられているようになっています。
ただし、中小企業が事業再生M&Aを希望しても譲受側とのマッチングが奏功しない場合等には転廃業を余儀なくされることも少なくありません。
それを極力減らし、再生の道順を示すのが事業再生コンサルタントの大きな役割です。
(3)事業再生M&Aの転職市場は最もホット
現在、日本では事業再生M&A案件が右肩上がりで増えており、事業再生を望む企業をサポートするM&A仲介会社・M&Aアドバイザリー・FAS等も増加し、たいへん活気があり将来性のある業界となっています。
- 事業再生M&A業界の将来性はトップクラス
- 事業再生M&Aを扱うコンサルタントは高収入
比較的新しい業界ではありますが、ニーズの増加により即戦力となる中途採用を積極的に採用している会社も多く、事業再生は転職市場で最もアツい業界の1つとなっています。
その詳細について、次に解説していきます。
#1:事業再生M&A業界の将来性はトップクラス
事業再生M&A案件は年々増加し、業界の将来性の高さはトップクラスです。
しかし、事業再生M&Aのニーズの高まりに対しコンサルタント数が追い付いていないため、実際にコンサルタント業務にあたる事業再生コンサルタントの数が圧倒的に不足しています。
増加の一途をたどる事業再生M&Aに対応するために、現在、M&A仲介会社やM&AアドバイザリーやFASなどでは積極的に即戦力となる人材の中途採用を行っています。
しかも、M&A未経験であっても財務・会計スキルや法人営業などで鍛えた高いコミュニケーションスキルがあれば採用されることも多く、社内での研修も受けられるなど転職後のサポートも充実しています。
企業再生M&Aで活躍したい人にとって、この業界への転職はまさに今が絶好のタイミング、狙い目です。
#2:事業再生M&Aを扱うコンサルタントは高収入
クライアント企業の命運を大きく左右する事業再生コンサルタントの仕事は激務ではありますが、その一方でやりがいはもちろんのこと年収の高さでも知られています。
一例として職位ごとで平均年収を見てみましょう
- アソシエイト:600~800万円前後
- マネージャー:800~1,200万円前後
- ディレクター:1,000~1,500万円前後
- パートナー:2,000万円以上
基本給が高いだけでなくインセンティブも高額であるところが多いため、転職して早い時期にさらに高額の報酬を得ている人も少なくありません。
日本では年功序列により成果をあげても報酬に反映されない企業も多いのですが、事業再生M&Aに関わる仕事は自分の頑張りが適切に評価され収入に直結される環境であるため、モチベーションを高く持ちながら働くことができるのも魅力といえるでしょう。
2.事業再生M&Aを手掛けている企業
次に、事業再生M&Aを手掛けている企業を紹介します。
- フロンティアマネジメント株式会社
- かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
- ユニヴィスグループ
次に1つずつ見ていきましょう。
(1)フロンティアマネジメント株式会社
フロンティアマネジメント株式会社は、「経営コンサルティング」「M&A」「事業再生」の3つのサービスを提供する総合ソリューション型のコンサルティングファームとして次々に案件を手掛け、着実に実績を増やしているアドバイザリー企業です。
再生支援を必要とする企業に対し、事業再生計画策定から実行支援、金融機関との利害調整、経営改革(ターンアラウンド)のための経営参画、各種再生手続き上の支援までトータルサポートを行っています。
経験豊富なプロフェッショナルによるハンズオンのサポートや多様なバックアップを有するチームが一体となって行う支援体制により、これまでに数々の事業再生M&Aを実現しています。
激務ではありますが、2021年の平均年収(賞与含む)は1,233万円(平均年齢38.7歳)、過去5期分の平均年収は1,272万円と年収ランキングでも上位に入っており、転職市場でも人気が高い企業です。
(2)かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社は、日本各地で活躍した近江商人が大切にしていた「買い手よし売り手よし世間よし」の理念のもとで数々の事業再生を手掛けている独立系M&A仲介・アドバイザリーです。
監査法人・税理士法人など全国に展開する『かえでグループ』のネットワークを活かし、問題を抱える中小企業の事業再生を数多く成功させています。
また、地域経済活性化支援機構(REVIC)の特定支援、中小企業再生支援協議会スキーム、特定調停手続きなど私的整理の実績が豊富で手続きに精通しており、現状の課題や今後の成長可能性などを徹底的にヒアリングした上で最適なソリューションを提案するのを得意としています。
規模はそれほど大きくはありませんが、拡大するM&A需要の高まりを受けて即戦力となる中途採用に力を入れており、M&A業界への転職を考えている人に人気が高くなっています。
本記事で挙げた企業のほか、事業再生に関わるM&A仲介やFASの代表企業について、詳しく知っておきたいという方はこちらをご覧ください。
(3)ユニヴィスグループ
ユニヴィスグループは「M&A」や「コンサルティング」「事業投資」の3つのサービスを一体として提供しており、起業する前の準備段階のベンチャー企業から事業再生段階の企業まで幅広く支援しています。
こちらは投資実行だけでなく、経営陣として投資先企業のマネジメントを経験することもでき、より深く知識を蓄えることができます。
また、グループ内には公認会計士や税理士、弁護士なども所属しており、法務面の観点からも手厚いサービスを提供することができます。
M&A業界での経験の有無は問わないので、事業投資の業務に興味のある方は公式採用サイトよりエントリーしてみてはいかがでしょうか。
3.事業再生M&Aの4つの方式
次に、事業再生M&Aの4つの方式について解説します。
- 企業再生方式
- 事業譲渡方式
- 会社分割方式
- 第二会社方式
単に事業再生M&Aと言っても、クライアント企業の状況や取り巻く条件によって選ぶ方法は異なります。
どの方式がクライアント企業にとって最大のメリットや利益が得られるか・どのように進めていくかを判断するのも事業再生コンサルタントの腕の見せ所です。
次に1つずつ見ていきましょう。
(1)企業再生方式
1つ目の事業再生M&Aは、企業再生方式です。
債務者企業の法人格を維持しつつ、採算性のある優良事業部門を中心に再生を図る方法で、債務者企業は法人格を維持しながらスポンサー企業の子会社として再建していくことになります。
中小企業の再生では企業再生方式のように法人格を維持しながらの再生を試みると取引停止となるリスクが高いため、主として規模の大きい企業の事業再生M&Aで採用される方式です。
(2)事業譲渡方式
2つ目の事業再生M&Aは、事業譲渡方式です。
中小企業の事業再生手続において広く一般的に利用されている方式で、債務者企業が手掛ける事業の全部または一部をスポンサー企業に譲渡し再建を進めていきます。
ただし、事業譲渡は労働承継法が適用されないため、事業譲渡に伴う従業員の転籍手続きを個別に取る必要があるなど手続きが煩雑になるのがネックです。
しかし、債務者企業の経営権を維持したまま、スポンサー企業に譲渡したことで得られた売却利益を現金として獲得できるため、換金の手間が省けて即座に収益性のあるメインの事業の運営資金に回せるというメリットがあります。
(3)会社分割方式
3つ目の事業再生M&Aは、会社分割方式です。
これは債務者企業が手掛けている事業の全部または一部を既存会社に移転(吸収分割)または新設会社に移転(新設分割)するM&Aです。
労働承継法の適用されない事業譲渡と異なり、会社分割は労働承継法が適用されるため、労働者との協議や事前通知を行えば個別の手続きをとる必要がないメリットがあります。
(4)第二会社方式
4つ目の事業再生M&Aは、第二会社方式です。
第二会社方式は、債務者企業が適切な第三者のスポンサー企業を見つけることができなかった場合に自主再生により再生を図る際に用いられる方法です。
M&Aによって債務者企業の採算事業を新設会社または既存の会社に承継し、事業維持に必要な従業員や取引先を新会社に移行し、残された不採算事業を残した債務者企業は移されなかった資産等を売却したのちに清算されます。
元の債務者企業は消滅しますが、採算事業を継承した新会社の経営状態に悪影響を及ぼさずに不採算事業を切り離して処分することができると同時に、コアとなる採算事業だけを引き継いだ新会社で実質的な事業再生を果たすことができます。
しかも、新会社を作ることで、出資の受入や新規の借入をして事業を安定・成長するための資金を確保できるというメリットもあります。
債務者企業の事業の切り出しや新会社の設立、特別清算もしくは破産の手続きなど、第二会社方式を採った場合に行うことは多岐にわたっています。
まとめ
現在の日本では、後継者不足の問題だけでなく、長引くコロナ禍により経営に問題を抱えてM&Aによる事業再生を図る中小企業が増えています。
事業が望ましいものではない状態に陥った時に会社全体の健全化のために事業再生M&Aを選択せざるを得ない企業・経営者を支える事業再生コンサルタントの仕事は大きな重責を背負うことになります。
どの方式であれ、事業再生M&Aが失敗することはその企業に決定的なトドメを刺すことになってしまうため、失敗に終わることは許されません。
そのため事業再生コンサルタントの責任は重いものですが、危機に瀕した企業の事業再生を成功させた時には「1つの企業を生き返らせることができた」と大きな達成感や充足感を感じることができます。
また、日本の未来を支える事業再生M&Aに関わることに大きなやりがいを感じられることでしょう。
現在、事業再生業界は採用ニーズが高く、転職市場も活発であり積極的に中途採用も行われています。
初心者にも門戸も大きく開かれているので、事業再生に興味や熱意のある方はぜひチャレンジしてみましょう。
将来事業再生M&Aの転職を目指し、業界の転職事情や転職成功のコツなど、詳しく知っておきたいという方はこちらをご覧ください。
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