税理士としてM&A業界で活躍する!業務内容やおすすめの転職先を解説
「税理士資格を持っていてM&A業務に興味があるが、どのような企業に転職すべきだろうか?」
「M&A業務に携わりたいと思っているが、税理士資格をとるとどのようなメリットがあるのか」
このように、税理士としてM&A業務に関わってみたいと考えているが、どう知識やスキルを活かせるのかやどのような会社でキャリアを築けるのかについて疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
M&Aに関わる仕事には高度な財務関連スキルが必要であり、税理士という国家資格が十分に活かせるフィールドと言えます。
今回は、税理士としてM&A業務に関わりたいと考えている方に向け、M&Aにおける税理士の業務内容や資格を活かせる企業などについて紹介していきます。
税理士資格をすでに持っている方・そうでない方どちらもぜひ参考にしてください。
1.M&Aにおける税理士の業務内容
まずはM&Aにおいて税理士が行う業務内容について解説します。
- 税務サポート
- アドバイザリー
- デューデリジェンス
- バリュエーション
では、1つずつ説明していきます。
(1)税務サポート
税理士は税務のプロフェッショナルであるため、税務に関するサポート全般を担うことができます。
M&Aを行う際には多額の金銭のやり取りが発生しますが、譲渡企業は譲渡金額に応じた税金を納める必要があります。
また譲受企業も譲受した資産や負債、さらに買収された企業の時価評価純資産と実際の買収価格の差である「のれん」に関する正しい処理を行う義務があるため、プロによる助言・指導が双方には欠かせないのです。
このように譲渡企業に対しては節税方法を、譲受企業に対しては税務処理についてのサポートを中心に行います。
(2)アドバイザリー
税理士とひと口に言っても、相続に詳しい税理士や特定の業界に特化した税理士などさまざまです。
中でもM&Aに強みを持つ税理士は、M&A成立までに必要なあらゆる手続きやサポートを行うアドバイザリー業務を行います。
具体的には、M&A戦略の立案から相手先企業の調査・提案、企業間の交渉サポートなど一連の流れをプロの立場から支援します。
税理士や会計士といった国家資格を持たずともM&Aアドバイザリーとして仕事をすることは可能ですが、資格を持つことによって顧客からの信頼を得やすくなったり幅広く業務に携われたりするでしょう。
(3)デューデリジェンス
デューデリジェンスとは、譲受企業が譲渡企業の事業内容や経営状況などを財務・法務・税務といったあらゆる観点から調査し、リスクを洗い出したり株式価値を算定することを指します。
M&Aの最終契約に至る前に、譲渡企業が税務面でのリスクを抱えていないかどうかを判断したり、最も税負担の軽い安全なM&Aスキームを提案したりするのです。
具体的には、過去の税務申告書のチェック・関連会社間での取引履歴チェック・経営陣や税務担当者へのヒアリングなどを通して、該当企業の税務に対する姿勢などを判断します。
万が一譲渡企業が過去に誤った税務処理をしていたことが発覚し新たに損失を計上することになった場合、譲受企業の判断が変わったり譲渡価額が引き下げられたりする可能性もあるため、最も重要な業務の一つと言えるでしょう。
(4)バリュエーション
バリュエーションは「企業価値評価」のことであり、M&Aにおいて譲渡価格を決めるにあたって行う企業価値算定プロセスのことです。
基本的にM&Aに関しては、譲渡企業は可能な限り高く譲渡することを期待し、譲受企業はできる限り安く買い受けることを望みます。
そうした両者の相反する思いを一致させるためには、正確で透明性が高い企業価値算定が求められるのです。
バリュエーションはM&A仲介企業や税理士などが担当することが多く、中でも税務のプロフェッショナルである税理士という資格を持っていると、顧客の信頼を得やすく存在感を高めやすいでしょう。
2.税理士としてM&A業務に携われる場所
次に、税理士としてM&A業務に携わるためにはどのようなフィールドが考えられるのかについて解説していきます。
- M&A仲介企業
- M&Aアドバイザリー
- 税理士法人
では、1つずつ説明していきます。
(1)M&A仲介企業
まずM&Aに関わる会社として代表的なのが、M&A仲介企業です。
M&A仲介企業はその名の通り、会社や事業を売却したい企業と買収したい企業の両方とファイナンシャルアドバイザリー契約を結び、間に立って双方のサポートを行います。
企業によってはM&A案件の発掘からクロージングまでを一貫して担うこともありますが、税理士の資格を有している場合、顧客と直接やり取りをするコンサルタントに対しプロの視点で支援する立場に回ることも多いようです。
M&A仲介企業で仕事をする醍醐味は、譲受企業と譲渡企業の双方に直接関われる点でしょう。
さらに、M&A仲介の業界事情や代表企業など、詳しく知っておきたいという方はこちらをご覧ください。
(2)M&Aアドバイザリー
M&AアドバイザリーはM&A仲介企業とは異なり、譲受企業もしくは譲渡企業のどちらか一方の立場についてM&Aのプロセスを支援します。
M&A仲介企業が中小企業などがメインの顧客であるのに対し、M&Aアドバイザリーでは大手企業や海外案件などを担当することも多いようです。
扱う案件の規模が大きいほど、デューデリジェンスやバリュエーションといった税理士が担う業務は複雑かつ難易度も高くなるため、より専門性を磨きたいという方におすすめと言えるでしょう。
また譲受企業・譲渡企業どちらか一方のサポートに全力を注げるため、やりがいを感じやすいというメリットもあります。
(3)税理士法人
税理士を中心に構成される税理士法人でも、M&A業務を担っている場合があります。
税務ストラクチャリングやデューデリジェンスに特化している税理士法人や、中にはM&Aの戦略立案からクロージングまでを一貫して行い、さらにはM&A後の会計コンサルティングまでをカバーしているところもあります。
弁護士や会計士、その他M&Aの専門家などとグループ企業間などで繋がりを持っている場合、あらゆる専門家たちとタッグを組んでM&Aプロセス全体に携わることもできるでしょう。
ただし税理士法人への転職を考えている場合は、希望するM&A関連の業務に関われそうかどうか事前によくチェックしておく必要があります。
3.他の業種との違い
M&Aのプロセスを実行するためにはあらゆる知見が必要であり、税理士以外にも携わっている職種は複数あります。
ここでは、M&Aに関わる他の業種と税理士を比較した時どのような違いがあるのかについて解説します。
- 公認会計士
- 弁護士
- M&Aアドバイザー
では、1つずつ説明していきます。
(1)公認会計士
公認会計士は財務・会計面でより幅広い知識を有しています。
またグローバルな会計知識も豊富であり、企業分析や業界分析などにも強みを持っています。
税理士が税務のプロフェッショナルであるのに対し、公認会計士は財務・会計に特化しているため、デューデリジェンスや財務諸表を読み解いて企業価値を算定する場面で活躍することが多いでしょう。
より幅広くM&A業務に携わりたいという方は、公認会計士の資格取得を目指すのも一つの選択肢です。
(2)弁護士
弁護士は主に法務面でのサポートに従事します。
M&Aを実行する際には、譲受企業と譲渡企業の間で「秘密保持契約」や「基本合意書」、「最終譲渡契約」などの契約を結ぶ場面が複数あります。
これら一つひとつの契約において、適切なリーガルチェックを行わなければ、不備があったりどちらかに不利益な契約を結んでしまったりするリスクがあるのです。
したがって、財務・税務という観点でのサポートは税理士が担いますが、法務の知識が必要になる局面においては弁護士の力を借りることが重要となります。
(3)M&Aアドバイザー
M&Aアドバイザーは会計士や弁護士とは異なり国家資格ではありませんが、M&Aの専門家としてM&Aに特化したアドバイスを行う職種です。
M&A仲介企業やM&Aアドバイザリーに属し、M&Aの新規案件の発掘から戦略立案、専門家と協力しながらM&Aのプロセスにおいて必要な助言を行いクロージングまでをサポートします。
税理士の資格をフルに活かしたい場合は、デューデリジェンスやバリュエーションなどに特化して業務を行う選択肢もありますが、広くM&Aのプロセスに関わりたい場合はM&Aアドバイザーとなる選択肢もあります。
M&A仲介企業やM&Aアドバイザリーによって求める職種や業務内容は異なるため、自分の希望とマッチするか事前に確認しておくとよいでしょう。
まとめ
今回は、税理士としてM&A業務に携わりたいと考えている方に向け、業務内容や転職先、他業種との違いなどを解説してきました。
税理士は税務のプロフェッショナルとして、M&Aにおける重要なプロセスで知見を活かすチャンスがあります。
ただし、属する企業により求められる業務内容の幅や種類が異なっていたり、より幅広くM&A業務に関わるための資格なども存在するため、自分の目指す姿を今一度明確にするとよいでしょう。
自分に向いている転職先を知りたい、どのように転職活動をすればよいか迷っているという方は、ぜひM&A業界に強い転職エージェントに相談してみてください。
常に最新の業界・企業情報をアップデートし、直接企業の担当者とのやり取りから採用したい人材の情報なども仕入れているため、的確なアドバイスやサポートをしてくれます。
ぜひ専門家をうまく活用し、後悔のない転職活動を行ってくださいね。
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