事業承継のコンサル業務内容は?中途採用事情やおすすめの会社を紹介
「事業承継が増えていると聞くが、事業承継コンサルとはどんな業務を行っているの?」
「事業承継業界の転職事情や、事業承継に強い転職先を知りたい」
近年経営者の高齢化や少子化の問題で、事業承継を行う中小企業が増えているという話を聞いたことがある人も多いと思います。
事業承継コンサルの役割は、事業承継を行う企業と後継者の間に入り、事業承継がサポートに進むよう、さまざまな専門知識を駆使して中小企業を支えるというものです。
本記事では、事業承継コンサルの業務内容や転職事情、事業承継に強いおすすめの転職先を4社紹介します。
事業承継コンサルに興味のある人は、今後の転職活動の参考にぜひ読んでみてください。
1.事業承継コンサルとは
事業承継コンサルとは、事業承継が円滑に行われるように、手続きのサポートを行う専門家のことです。
経営者にとって事業承継はとても大切なことですが、日常的な業務をこなしながら事業承継の煩雑な手続きを行うことは、非常に大変といえます。
事業承継コンサルは、事業承継を計画、実行、承継後のフォローまでを一貫して行えることが強みで、いままでのノウハウや実績に優れているのが特徴です。
(1)事業承継とは
あらためて事業承継について確認します。
事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことです。
- 親族内事業承継:子どもなどの親族が後継者となる
- 社内事業承継:社内の役員や従業員が後継者となる
- M&Aによる事業承継:会社や事業を売却し、買手が後継者となる
日本では親族内事業承継や社内事業承継が多く行われていましたが、少子化や資金不足により、M&Aによる事業承認が増えてきました。
M&Aによる事業承継であれば、親族や社内で後継者が見つからない場合に売却や廃業を選ぶよりも、会社の存続と従業員の雇用が引き続き守られるため、以前よりも注目度が増している事業承認の方法です。
2.事業承継コンサルの業務内容
事業承継コンサルの具体的な業務内容は以下の通りです。
- 事業承継の戦略・計画の策定
- 資産の承継対策
- M&Aによる事業承継のサポート
詳しく見ていきましょう。
(1)事業承継の戦略・計画の策定
事業承継コンサルタントはまず、事業承継の戦略・計画の策定を行います。
策定方法は主に以下の通りです。
- 現状の分析と把握
- 後継者の育成と選定
- 事業承継計画の策定
- 事業の改善
- 事業承継戦略の決定
事業承継コンサルは、事業承継に何から手をつけて良いのかわからない経営者に対して多角的な視点でアドバイスをすることで、事業承継の具体的な道筋を示します。
上記の方法で策定を行うことで、計画的に事業承継を進めていきます。
(2)資産の承継対策
事業承継では資金問題について課題に挙げられることが多々あるため、M&Aによる事業承継だけでなく、親族内事業承継や社内事業承継の場合でも、相談があれば資産の承継対策を行います。
例えば自社株式・事業用資産を誰に引き継ぐのかについて、遺言を活用したり会社や後継者による買取・新株発行の割り当て、株式の譲渡制限や相続人に対する譲渡請求制度で会社法を活用することがこれに当たるでしょう。
事業承継コンサルは資産の承継対策についてオーナー経営者と一緒に検討し、良い方法を模索していくことも業務のひとつです。
(3)M&Aによる事業承継のサポート
M&Aによる事業承継のサポートは、親族内事業承継や社内事業承継と比べて、手続きが複雑になるため、事業承継コンサルを介して行うのが一般的です。
親族内承継や社内承継である程度後継者が決まっているのとは違い、M&Aによる事業承継は第三者の後継者を探す必要があります。
しかし全く当てが無いという企業も多いため、事業承継コンサルは後継者の選定、さらにその育成やサポートまでも業務として行っているのです。
3.事業承継業界の転職事情
ここまで読んで、事業承継コンサルとして仕事をしてみたいと思った人も多いことでしょう。
ここからは、事業承継業界の転職事情について各項目を紹介します。
- 事業承継業界の将来性
- 事業承継コンサルの中途採用傾向
- 未経験からでも可能か?
- 事業承継コンサルになるために有利な資格
- 事業承継コンサルの平均年収
以下で見ていきましょう。
(1)事業承継業界の将来性
事業承継業界は、今後も高まりを見せるといえるでしょう。
昨今では後継者のいない中小企業が積極的に売手となるM&A件数が増加しており、市場規模が伸びている状況です。
年度 | 事業承継の件数 |
平成24年度 | 17件 |
平成25年度 | 33件 |
平成26年度 | 102件 |
平成27年度 | 209件 |
少し古い資料になりますが、平成28年に中小企業庁がまとめた事業承継に関する現状と課題の資料から、事業承継の案件数は相談件数、M&Aの案件数ともに、倍増しているのが見て取れます。
現在ではもっと件数が伸びていると見られるため、事業承継業界の将来性はさらに伸びていくといえますね。
(2)事業承継コンサルの中途採用傾向
事業承継の件数が増えているのに連れて、多くのコンサルティングファームが事業承継コンサルの中途採用に力を入れています。
BIG4系コンサルティングファームから税理士法人なども事業承継に特化したコンサルタントを採用しており、この傾向は今後も高まる予想です。
主な採用ターゲットは税理士や弁護士、司法書士などで、他にも税務や法務などの専門知識を持った人が事業承継コンサルとして採用されています。
事業承継コンサルは必ずこの資格が無ければなれないものではありませんが、転職の際持っていると有利な資格がありますので、以下で確認してみてください。
(3)未経験からでも可能か?
事業承継コンサルは未経験からでも転職可能な職業です。
ただし中途採用を行っているコンサルティングファームは基本的に即戦力を求めている場合が多いため、コンサルを行う基本的なスキルが身についている人の方が、転職に有利といえるでしょう。
- 企業オーナーとの折衝経験
- コミュニケーション能力
- 論理的思考力
- プロフェッショナルマインド
コンサルタントはクライアント企業の経営者から、相談を受ける立場にあります。
これまでの経験で企業オーナーとの折衝を行ってきた人や、コミュニケーション能力、論理的思考力がある人は、クライアントの悩みを具体的に聴き、戦略を組み立てる基礎ができていることになるため、未経験でもその力を多いに役立てることができるでしょう。
また重要なのは、プロフェッショナルマインドです。
自身がその道のプロであるという自覚を持つことは、仕事を途中で投げ出さず本気で業務に取り組むために必要なものといえます。
(4)事業承継コンサルになるために有利な資格
続いて、事業承継コンサルになるために有利な資格を紹介します。
事業承継コンサルには、税務・法務・会計などの専門知識が必要になるものの、事業承継コンサルに関する独占資格自体はありません。
専門知識に強い資格を持っている人が、事業承継コンサルへの転職に有利といえます。
- 弁護士
- 税理士
- 公認会計士
- 司法書士
- 行政書士
- 中小企業診断士
- 社会保険労務士
- M&Aエキスパート認定資格
- M&Aスペシャリスト資格
- JMAA認定M&Aアドバイザー
- 事業承継士
事業承継コンサルになりたいけれど経験もスキルもないと思う人は、民間資格の勉強をして保有してみるのもおすすめです。
(5)事業承継コンサルの平均年収
最後に気になる事業承継コンサルの平均年収についてですが、事業承継コンサルの平均年収に関する資料は残念ながら見つけられませんでした。
ただ、各社求人案内によると、平均500万円前後での募集が多いようです。
会社名 | 募集要項記載の年収 |
株式会社M&A総合研究所 | ①未経験者:420万円+インセンティブ ②経験者:前職考慮 |
事業承継センター株式会社 | 360万円以上(月収30万円以上) |
税理士法人山田&パートナーズ | 約600万円 |
各コンサルティングファームでは、相手先候補を探して交渉を行うソーシングと、手続きの実践・サポートまでを行うコンサルでは給与体系が異なることを覚えておきましょう。
ソーシングの場合はベースとなる給与にインセンティブが加わるため出来高により大きな年収を得ることができる一方、コンサルの場合は給与は職位により決まります。
事業承継だけでなく、M&A全般を手掛けて成功報酬を受け取る場合や、職位が上がっていった場合は、さらに報酬がアップする可能性もあります。
いずれにしても中途採用で入社した時点で日本人の平均年収である433万円と同等か超える金額を受け取れるため、事業承継コンサルの平均年収は高いものであるといえるでしょう。
4.事業継承に強いおすすめの転職先4選
本記事を読んで、事業承継コンサルになりたいけれど、どこに応募して良いかわからないと思った人に向けて、事業承継に強い転職先を4社紹介します。
- 株式会社M&A総合研究所
- 事業承継センター株式会社
- 税理士法人山田&パートナーズ
- ユニヴィスグループ
各社の特徴などを記載していますので、ぜひご覧ください。
(1)株式会社M&A総合研究所
会社名 | 株式会社M&A総合研究所 |
設立 | 2018年10月12日 |
本社住所 | 東京都千代田区丸の内1-8-1 丸の内トラストタワーN館17階(受付) |
従業員数 | 121名 (2022年10月末時点) |
公式HP | https://masouken.com/ |
経験豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しているM&A総合研究所は、事業承継に力を入れているコンサルティングファームの一つです。
M&A仲介業務に最新のAI技術を取り入れた「M&A×TECH」の先駆けとして、PKSHA Technologyファンドとの資本業務提携も行っています。
第三者への事業承継を行うのにあたり、コンサルタントが注力するのが、相手先の選定ですが、AI技術により簡単に、最もマッチした企業を選ぶことが可能となります。
M&A総合研究所への転職難易度は高いですが、優秀なコンサルタントが非常に多く、同僚の仕事を見て学ぶことで、今後のキャリアアップにも活かせる職場といえるでしょう。
(2)事業承継センター株式会社
会社名 | 事業承継センター株式会社 |
設立 | 2011年12月 |
本社住所 | 東京都港区芝公園3-5-8 機械振興会館518 |
従業員数 | 公表なし |
公式HP | https://www.jigyousyoukei.co.jp/ |
事業承継センターは、事業承継を支援することで後継者や能力不足による会社消滅を減らし社会的資産を守ることを目的として、各業界の専門家集団により設立されました。
転職に関して国家資格を持っている必要は一切なく、ITに関する基礎的な知識やコーディネーション能力、コミュニケーション能力や財務・事業承継の能力を総合的に判断して採用が行われています。
基本的には9:00〜18:00の実働8時間ですが、相談しながらシフトを組む勤務体系となりますので、公私のバランスを取りながら働きたい人にもおすすめです。
(3)税理士法人山田&パートナーズ
会社名 | 税理士法人山田&パートナーズ |
設立 | 1981年4月1日 |
本社住所 | 東京都千代田区丸の内1-8-1 丸の内トラストタワーN館8階(受付9階) |
従業員数 | 809人 2021年10月1日現在 |
公式HP | https://www.yamada-partners.gr.jp/ |
山田&パートナーズとは、総合型税理士法人として幅広い税務サービスを提供する会社です。
国内19ヶ所にとどまらず、海外にも拠点を広げ、2022年1月1日現在では世界130カ国以上に拠点を有するグラントソントンインターナショナルに加盟し、国際化するニーズに対してもより多様な提案ができる体制を強化しています。
税理士法人である強みから、クライアント企業には事業承継税制などの制度を活用しながら事業承継の提案を行っている点が大きな特徴です。
専門職に関しては税理士試験科目合格や公認会計士試験合格などが必要になりますが、アカウンティング職については専門資格がなくても専門職と同様に活躍しているメンバーもいるため、自身に合った職種に応募するようにしましょう。
(4)ユニヴィスグループ
会社名 | ユニヴィスグループ |
設立 | 2014年 |
本社所在地 | 東京都港区虎ノ門3-8-8 NTT虎ノ門ビル6階 |
従業員数 | 98名 |
公式HP | https://univis.co.jp/ |
ユニヴィスグループは大手M&A会社・BIG4監査法人で案件を成約してきた経験豊富な専門アドバイザーが多数在籍しております。
M&A、事業投資、コンサルティングを一体として提供しており、グループ内には公認会計士や税理士、弁護士なども所属しており、法務面の観点からも手厚いサービスを提供することができます。
一方的に提案するのではなく、クライアントと前向きに何度も議論を行いながら、再現性と確実性に重点を置いた問題解決を図る「共創型」のアプローチを 志向してるそうです。
こちらは募集要項に必須資格やM&Aの知識の有無は問いませんので、M&Aの業務に興味のある方は公式採用サイトよりエントリーしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
事業承継コンサルとは、親族間や会社内、さらに第三者へのM&Aによる事業承継が円滑に進むようサポートする、これからの中小企業の将来を担う重要な職業です。
業務内容は事業承継の戦略から実務のサポートまで多岐に渡りますが、今後もニーズに拡大によって案件が増えていく予想となりますので、興味がある人はぜひ事業承継を行っているコンサルティングファームへの転職を検討してみてください。
事業承継コンサルになるのにあたり、必要な資格はありませんが、あると有利な資格やスキルはたくさんあります。
自身のスキルの棚卸しをしつつ、事業承継コンサルへの転職を具体的に進めていってください。
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