M&Aに関わる場合は資格が必要?資格の種類や取得方法をご紹介
「M&A関連の仕事をしたいが、資格が必要なのだろうか」
「M&Aの資格を取りたいが、色々ありすぎて何を取得すべきかわからない」
このように、M&Aに関する資格に興味があるがその必要性や取得すべき資格がわからないと悩んでいませんか。
結論から言えば、FASなどでM&A業務に携わるうえで資格の取得は必須ではありません。
しかし、資格を1つの目標に掲げて日々学ぶことは能力やスキルの向上に大きく役立ち、昇給や転職においてもメリットがあります。
本記事では、M&Aに関連する資格とはどんなものがあるのか、それぞれの難易度や取得方法などをご紹介します。
スキルを磨くために資格の取得を考えている方は、ぜひ参考にしてキャリアのプラスになる資格を見つけてください。
本記事の前に、M&A仲介やFASなどM&A業界の基本情報について、より詳しく知っておきたいという方はこちらをご覧ください。
1.M&Aに関連する資格
日本の資格には大きく分けて、国の法律に基づいて証明がなされる国家資格と、それ以外の民間団体などが証明する民間資格の2種類があります。
まずは、M&A業務に関連の深い国家資格を3つご紹介します。
- 公認会計士
- 税理士
- 中小企業診断士
それでは詳しくご説明していきます。
(1)公認会計士
公認会計士は監査業務が行える唯一の国家資格で、高い会計知識が必要とされ難関国家試験の1つと言われています。
試験の概要としては、以下のとおりです。
試験形式 | 第Ⅰ回短答式試験、第Ⅱ回短答式試験、論文式試験(全3回) |
受験期間 | 約1.5~2年 |
難易度 | 特に高い |
合格者数(2021年) | 1,360人(合格率:9.6%) |
必要な勉強時間 | 約3,000時間 |
公認会計士の資格取得で身に付けられる知識の中で、M&Aに最も関連深い業務はデューデリジェンスです。
デューデリジェンスは、合併および買収の対象となる企業を財務的・法的などの点から調査することで、会計・財務のプロフェッショナルである公認会計士のスキルをフルに発揮できる領域と言えます。
またFASなどで経験を積んだ公認会計士であれば、買収先企業のバリュエーションなどさらに多くの業務を手掛けられることを転職先の企業にアピールできるでしょう。
(2)税理士
税理士は、税務書類の作成・税務代理・税務相談を独占して行う税務のスペシャリストです。
試験の概要としては、以下のとおりとなっています。
試験形式 | 記述試験(全11科目) |
受験期間 | 約2~3年 |
難易度 | とても高い |
合格者数(2021年) | 5,139人(合格率:18.8%) |
必要な勉強時間 | 約4,000時間 |
税理士は、M&Aにおける税務全般のサポートを担います。
会社の売買を行うM&Aにおいては法人税や所得税などあらゆる税金が絡みますが、それらを1つひとつ正しく処理することが非常に重要です。
そのような中で、税務に関する業務を独占する税理士は税務のスペシャリストとしての能力を発揮できます。
会計にも精通しているため、企業価値の算定などにも携われることも転職先へのアピールになるでしょう。
(3)中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行うプロフェッショナルであることを証明する国家資格です。
中小企業者が経営資源を確保するための業務に従事する、経営コンサルタントのような位置づけとも言われます。
中小企業診断士の概要は、以下のとおりです。
試験形式 | 第1次試験、第2次試験、実務補習または実務従事(15日以上) |
受験期間 | 約1~3年 |
難易度 | 高い |
合格者数(2021年) | 5,839人(合格率:36.4%) |
必要な勉強時間 | 約1,000時間 |
中小企業診断士は、中小企業に対して経営指導を行うなかで、中小企業のM&Aなどを手掛けることもあります。
M&A業務のなかでも特に、M&A実施後に買収元と買収先の企業を経営・業務・意識の3段階に分けて統合するPMI業務において能力を発揮できるでしょう。
M&Aとは、財務諸表上で複数の会社が統合されるだけではなく実際の現場までが統合されることを意味します。
買収された側の企業は、買収した側の企業の経営方針やカルチャーを理解しなければなりませんが、そのようなときに中小企業診断士が間に入り、買収先の企業の従業員のケアという形でフォローを行います。
M&Aを行うまでだけではなく、M&Aを行った後にも価値を発揮できることは転職先へのアピールになるでしょう。
2.M&Aに特化した資格
これまでM&Aに関連する国家資格についてご紹介しましたが、よりM&A業務に特化した民間の資格も複数あります。
ここでは、M&Aに特化した民間資格を4つご紹介します。
- M&Aエキスパート
- M&Aスペシャリスト資格
- JMAA認定M&Aアドバイザー
- 事業承継士
それでは詳しく説明していきます。
(1)M&Aエキスパート
M&Aエキスパートは、M&A仲介実績No.1の「日本M&Aセンター」と「金融財政事情研究会」が共同企画・運営している、中小企業のM&A実務に関する認定制度です。
以下の通り、3つの段階に分かれています。
- 事業承継・M&Aエキスパート
- 事業承継シニアエキスパート
- M&Aシニアエキスパート
1番上の事業継承・M&Aエキスパートが入門編で、事業継承・M&Aシニアエキスパートに関してはそれぞれの実務ノウハウを体得したプロフェッショナルスキルの証明になります。
M&Aエキスパートの主な概要は、以下のとおりです。
運営元 | 日本M&Aセンター、金融財政事情研究会 |
試験内容 | 事業継承、M&A実務に関する知識・ノウハウ |
受験資格 | 特になし ※事業継承・M&Aエキスパートの場合 |
難易度 | 低い |
費用 | 7,700円(税込) |
最もベーシックな事業継承・M&Aエキスパート認定試験は難易度も低いため、力試しとしてまず挑戦するのにおすすめです。
(2)M&Aスペシャリスト資格
M&Aスペシャリストは、中小企業の事業承継のうち重要なテーマである合併・買収・事業譲渡(M&A)のスペシャリストであることを認定する資格です。
一般社団法人 日本経営管理協会 (JIMA)が運営・認定を行っています。
買収事業価値の評価や買収の手続き、買収後のPMIなどの実務に特化した試験となっており、資格保有者は協会が開催するセミナーへの参加や、実際のM&Aプロジェクトに参画ができます。
M&Aスペシャリストの主な概要は、以下のとおりです。
運営元 | 一般社団法人 日本経営管理協会 (JIMA) |
試験内容 | 中小企業の合併・買収・M&Aに関する知識・ノウハウ |
受験資格 | 特になし |
難易度 | やや高い |
費用 | 11,000円(税込) |
難易度や費用は高めですが、資格保有後は協会の関係者とのつながりを作れたり、M&Aの具体的な業務も体得できたりとメリットの多い資格です。
(3)JMAA認定M&Aアドバイザー
JMAA認定M&Aアドバイザーは、一般社団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)が運営するM&Aアドバイザーの認定制度です。
一般的な資格試験スタイルではなく、JMAAが主催する「M&A実務スキル講座」を受講したのち修了試験に合格すると入会資格を得られます。
入会のメリットとして、以下があげられます。
- M&Aアドバイザーの実践的な知識のブラッシュアップ
- 同業者・専門家とのネットワーク
- 案件のデータベース共有
- 開業のサポート
ステータスを得るためというよりは、入会することでM&Aアドバイザーとしてのスキルや経験を上げるためのさまざまな情報やサービスを享受できる資格と言えるでしょう。
JMAA認定M&Aアドバイザーの概要は、以下のとおりです。
運営元 | 一般社団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA) |
試験内容 | M&Aに関する実務スキル |
受験資格 | 特になし |
難易度 | 低い |
費用 | 入会金:33,000円(税込)、月額:11,000円(税込) |
実務スキルの獲得だけでなく、M&Aに精通した運営元からの手厚いサポートを受けたいという方にぴったりの資格といえるでしょう。
(4)事業承継士
事業承継士は、事業承継において企業の理念や文化、ノウハウなどを承継し後継者に繋ぐうえでの諸問題を総合的に解決に導ける唯一の資格です。
単なる相続対策や節税対策などにとどまらず、弁護士・公認会計士・税理士のような専門家をコーディネートする立場としても活躍できます。
事業承継士の資格は、指定された資格取得講座を受講し認定試験に合格したのち入会という形で取得が可能です。
入会しておくと、協会が主催・後援するセミナーに会員価格で参加できたり、業務委託先の事業承継センター株式会社での案件を優先的に回してもらえたりするメリットがあります。
中小企業の事業継承に興味があり、さまざまな業界情報などを知りたいという方におすすめの資格です。
事業承継士の資格概要は以下のとおりです。
運営元 | 一般社団法人事業承継協会 |
試験内容 | 事業継承に特化した知識・ノウハウ |
受験資格 | 中小企業診断士、ファイナンシャル・プランニング技能士などの12の専門資格のうち1つ以上の取得が必要 |
難易度 | やや高い |
費用 | 資格取得講座受講料:330,000円(税込)、入会金:11,000円(税込)、年会費:11,000円(税込) |
3.M&A関連資格を取得するメリット
M&Aに関する資格は多岐にわたることをお伝えしてきました。
業務に従事するにあたって専門資格の保有は必須でない中、資格を取得するメリットはあるのでしょうか。
ここでは、M&Aに関する資格を取得するメリットを3つご紹介します。
- 顧客の信頼を得られる
- 手掛ける業務の範囲が増える
- 専門家同士のネットワークを作れる
それでは詳しく説明していきます。
(1)顧客の信頼を得られる
資格を取得することで享受できる最も大きなメリットとしては、顧客の信頼を得られやすいことでしょう。
M&A業務に資格が必須ではないということは、資格を持たずに経験だけを語るM&Aアドバイザーも多く存在しているということです。
昔からの深いつながりがあったり輝かしい経歴がある場合などを除き、顧客が初対面のアドバイザーを信用するリスクは大きいといえます。
そのため新規案件を手掛ける際に一目でわかるような資格を保有していれば、それだけで一定の信頼を勝ち取ることができるのです。
もちろん資格をただ取得するだけでは意味がありませんが、資格の取得に向けて学んだことやそれらを活かして体得した実務スキルをしっかりと発揮できれば、仕事の成果も大きなものとなるでしょう。
(2)手掛ける業務の範囲が増える
学ぶ内容の範囲や科目数の多い国家資格に限らず、民間資格であってもさまざまな知識やスキルを体系的に学ぶことができます。
日々業務をこなす中では身に付けられない内容もあるため、資格の取得に励むプロセスで得た知識をもって手掛ける業務の範囲も広げられるでしょう。
税理士など独占業務のある資格であれば、取得することで特定の業務に携われるようにもなります。
新しいことに挑戦したいと考えている人にも、資格の取得は1つのきっかけとして非常におすすめなのです。
(3)専門家同士のネットワークを作れる
国家資格・民間資格を問わず、資格を取得した際には運営元の協会に名前を登録します。
協会によっては、資格保有者だけが参加できるセミナーや交流会などを開催しているところも多く、プロフェッショナルたちとのネットワークを作る機会を得られるでしょう。
業界の内部事情など専門家だからこそ知っている情報の交換や新たな仕事の獲得など、多くのメリットが期待できます。
スキルや能力の向上とあわせて、こうした人脈形成などに魅力を感じて資格を取得する人も多いでしょう。
まとめ
M&Aは一見シンプルに見えますが、実は非常に複雑なステップや問題解決を経て成立するものです。
また2つとして同じ状況の会社はなく、M&Aの事例は1つひとつ目的や内容、必要な手続きが異なります。
ゆえに、さまざまな専門家が関わり知識を出し合って慎重に進めていく必要があるのです。
経験ももちろん重要ですが、実務スキルやさまざまな事例を知ることはM&A業務を進めるうえで必ず役に立つでしょう。
M&Aアドバイザーとしてのレベルを上げたい方は、ぜひ自分に合った資格を探して取得を目指してみてください。
本記事のほか、M&A仲介やFASなどM&A業界への転職に向け、代表企業や転職成功のコツなど、より詳しく知っておきたいという方はこちらをご覧ください。
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