M&A業界への転職は未経験でも可能!トライしやすい会社や必要スキルを紹介
「現在公認会計士として勤務しているが、M&A業界への転職に興味がある」
「未経験者でもM&A業界への転職は可能なのか知りたい」
このように悩んでいる人はいるのではないでしょうか?
M&A業界では財務や会計に関する専門知識を背景に、高い営業力や交渉力をもって業務を遂行していくことが要求されます。
そのため、未経験からM&A業界への転職は不可能と感じる人もいるでしょう。
しかし、実は未経験者でもM&A業界への転職は可能であり、実際に未経験からM&A業界に転職して活躍している人も多いです。
ここではM&A未経験者でもM&A業界への転職が成功するための狙うポジションや必要知識・スキルについてご紹介します。
また、転職を成功させるために注目すべきポイントについても解説しています。
M&A業界への転職の特色や要求される知識・スキルや留意点を押さえて、ぜひ転職の成功に役立ててください。
本記事のほか、M&A仲介やFASなどM&A業界について、より詳しく知っておきたいという方はこちらをご覧ください。
1.未経験者でもM&A業界への転職は可能なのか?
未経験者でもM&A業界への転職は可能です。
このように言えるのは、M&Aを取り巻く近年の状況とそれに応じた採用動向が深く関わっています。
- M&A業界の採用動向
- 転職難易度は高いが可能
以下で具体的に見ていきましょう。
(1)M&A業界の採用動向
M&A業界に属する企業は、M&Aの際に吸収合併される側の企業と買収する側の企業のどちらか一方あるいは双方の立場から一連の流れをサポートするサービスを提供しています。
近年、中小企業の後継者不足や業界の再編などの動きを背景に、中堅・中小企業のM&Aが増加しています。
そのため、とくにM&A仲介などでは担い手の不足などの事情から一部では未経験者を対象とした中途採用を実施する企業も増えてきました。
しかし、未経験者を対象とした中途採用であっても、高い営業スキルや財務・会計などの高いビジネス知識が要求されます。
このような状況から、書類から内定までの未経験者の通過率は平均して数%程度に留まっているのが現状です。
(2)転職難易度は高いが可能
ポテンシャル採用を行っていないと公言している企業以外であれば、未経験者のM&A業界への転職難易度は高いですが不可能ではありません。
事業譲渡やベンチャー企業などのM&A案件の増加によって、数十年前に比べてM&A仲介会社自体の企業数や案件数は右肩上がりに増えています。
それに伴い、新卒採用や未経験者の中途採用を積極的に行っている企業が増えてきているため、未経験者でもM&A業界へ転職できる可能性が高くなっているのです。
M&A仲介の未経験者の採用や活かせるスキルなど、より詳しく知っておきたいという方はこちらをご覧ください。
2.M&A業界での主な業務内容
M&A業界での主な業務内容を見ていきましょう。
- 見込み顧客の開拓、M&Aの準備・起案
- M&A相手とのマッチング、アプローチ
- M&A相手との交渉、合意書・契約案の作成代行・助言
- バリュエーションの実施
- デューデリジェンスの実施
- クロージング
- アフターフォロー
M&Aでの業務内容は多岐に渡り、半年から1年以上に渡り、1つの案件に関わっていくことになります。
具体的には、見込み顧客の発掘から始まり、ソーシング、交渉、契約書の作成、クロージングまでの一連の流れがダイナミックに展開されていきます。
この間にも、企業や事業価値の算出や買収額の最終的な決定など、財務や会計に関する専門的な業務が随所に見られ、渾然一体となって手続が進んでいきます。
このような複雑かつダイナミックな手続を遅滞なく進めていくためには、初期段階の準備で資料収集・分析、戦略・スケジュール策定などが必要不可欠です。
また、合併や買収が完了した後にも企業価値や事業価値などの維持・向上までを含めたアフターフォローにも関与する場合があります。
そのため、M&A業界では高度な営業力や交渉力とビジネス知識を備えていることが強く要求されます。
しかし、元々は未経験者の採用が少ない業界であるため、きちんとした研修制度がある企業は少ないと考えられます。
未経験者にいきなり業務を行わせることはあまりありませんが、業務に取り組むにあたっては受動的な態勢ではなく、自ら仕事を覚えていく積極性が求められることでしょう。
また、入社後もM&Aのプレーヤーとして関与するためには、日ごろからの情報収集とビジネス知識の向上は欠かせません。
業界の動向や財務・会計・法務に関する知識や情報を積極的かつどん欲に追求できる向上心を持ちながら業務を進めることが重要です。
3.未経験者がトライできるM&A業界でのポジション
未経験者がトライできるM&A業界でのポジションとしては、以下のものが挙げられます。
- M&A仲介会社
- FASのM&A部門
- 銀行や証券会社でのM&Aチーム
順にご紹介します。
(1)M&A仲介会社
1つ目は、M&A仲介会社です。
M&A仲介会社では、売手と買手の間に立って、M&Aの成立をサポートする仲介役を行います。
買い手・売り手の間に立って交渉をとりまとめるため、どちらか一方ではなく双方の意見を聞きながらM&Aを進めていくのが難しいポイントです。
会社によっては見込み客の開拓から始めるところも多いため、前職で営業経験を積んだ方であれば、未経験でも採用される可能性があります。
そのためには、新規開拓の経験や営業成績・実績を問われることが多いため、自分の実績については一度整理しておきましょう。
また、M&A仲介では企業の経営層や役員との交渉がメインとなります。
そのため、経営層や役員とも互角に渡り合えるほどの高度な財務・経営に関するビジネス知識も要求されます。
一般的には、M&A仲介では日商簿記2級以上の知識が必要とされています。
営業力とビジネス知識を高いレベルで兼ね備えていることが求められます。
また、M&Aの手続の多くをマネジメントすることが主たる業務であることから、業界再編などに興味や関心を持つ人には魅力的な業種であると言えます。
主なM&A仲介会社は以下の通りです。
また、M&A案件を手掛けたときの着手金や成功報酬などで大きなインセンティブをもらえるため、前職と比べて年収が大きくアップする可能性もあります。
営業に関する経歴やスキルを持っていて、他業種などでも自分の力を試したい人やさらに営業力を向上させたい人には、最適な環境であると言えます。
また、M&A仲介の業務内容や代表企業、活かせるスキルなど、より詳しく知っておきたいという方はこちらをご覧ください。
(2)FASのM&A部門
2つ目は、FASのM&A部門です。
FASとなファイナンシャル・アドバイザリー・サービスの略称で、財務・会計に関するコンサルティングサービスを提供しています。
M&A仲介会社とは異なり、M&A業務執行がメインの業務となります。
例えば、企業の価値を算定して取引金額を決定するバリュエーションや、財務・法務面などから調査を行って問題点や解決策を検討するデューデリジェンスなど、M&Aの流れの中では実行部分の業務に深く着手する傾向があります。
このように財務や会計の観点からM&A戦略の立案や事業再生の支援などを遂行するため、高度な財務・会計に関する知識や実務経験が要求されます。
そのため、以下のような経歴や資格があると優遇される傾向にあります。
- 銀行や証券会社などの金融業界の出身者
- 大手企業の財務部門の出身者
- 公認会計士
- 税理士
一般的には公認会計士や税理士などの士業のセカンドキャリアとして選ばれる傾向にあります。
また、財務や会計以外にもコンサルティングの経験がある人も高い評価を受けるため、コンサル業界からの転職者も多いのが特徴的です。
企業の経営再編などについても財務・会計の面から専門的なアドバイスやサポートをすることが求められるため、企業や従業員の未来にも大きな影響を与えます。
そのため、FAS業務が成功するとクライアントから直接感謝されるという環境は、仕事に対する大きなやりがいを与えてくれると言えます。
(3)銀行や証券会社でのM&Aチーム
3つ目は、銀行や証券会社でのM&Aチームです。
銀行や証券会社に所属し、クライアントなどに対する買収資金の融資や専門的な助言の提供、M&Aの支援や相談対応などを担っています。
上の2業種との大きな違いは、新卒であってもチームに配属されればM&Aに関与するチャンスがあることです。
また、銀行や証券会社という性質上、資金調達や証券化、複数の金融機関が合同で融資を実施するシンジケートローンといった高度かつ専門性の高い金融業務に携われることもメリットとして挙げられます。
M&Aというダイナミックな手続を資金調達や金融という観点からサポートできる点が他の業種にはない魅力と言えます。
また、1つの案件に対してチームで動くため仲間とのコミュニケーションが欠かせません。
そのため、連携しながら業務成果を追い求めたい人には最適な環境であると言えます。
主な代表企業として、以下のものが挙げられます。
専門性の高い案件を主に扱い、仲介形態でのアドバイザリーを行うことはあまりありません。
上記以外にも地方銀行などでは、中小企業の後継者問題などから地元企業のM&Aをサポートすることが増えているようです。
また、就職先は銀行ですので、始めはM&Aチームでの所属であっても、その後能力次第で他の部署の所属になる可能性もあるため、それを事前に知った上で検討しましょう。
4.未経験者がM&A業界に転職するときに有利になる知識・スキル
未経験者がM&A業界に転職するときに有利になる知識やスキルをご紹介します。
ポジションなどによっても差がありますが、おおむね次の3つは必須のものとして要求される傾向が高いです。
1.営業成績
2.金融知識
3.業界知識
詳しく見ていきましょう。
(1)営業成績
前職で良い営業成績を残した人は、転職活動を有利に進めることができるでしょう。
商材は何であれ、とくに第三者から見て分かりやすい実績があれば良く、「生命保険のトップオブザテーブルなど営業成績で上位に入って表彰された」など、具体的なアピールができるようにすることがおすすめです。
個人営業だけでなく法人営業と新規開拓経験があれば尚良しとされています。
また、M&A業界で業務を行う際、実際に対面するクライアントは役員などの経営層がメインになります。
そのため、前職で経営層との交渉経験があるなどオーナーとの信頼関係を構築できる力をアピールできれば、未経験でもM&A業界への採用の道が開けます。
(2)金融知識
会計管理や資産形成、金利やローンの知識などの金融知識をもっていると、転職活動に有利だと言えます。
M&A業界では、企業の財務や会計に関する知識を駆使しながら業務を遂行する必要があるため、実務経験を有していることが望ましいとされています。
M&A業界未経験者の前職の職歴には、以下のようなものがあります。
- 証券会社
- メガバンク
- 地方銀行
- 総合商社
- 専門商社
- 中小企業向けコンサルティングファーム
証券会社やメガバンクなど金融系の企業が多く、金融知識を持っていることは転職時に有利であるといえるでしょう。
なお、金融業界において融資や金融の窓口を担当していると高く評価される可能性が高いです。
金融業界での経験がなかったとしても、事業会社の財務・経理部門での経験があれば有利にはたらくこともあります。
また、以下のような資格があるとより有利になると言われています。
- 公認会計士
- 税理士
- ファイナンシャルプランナー
- 証券アナリスト
M&A業界では必ず資格が必要という訳ではありませんが、未経験でのチャレンジが不安な方は、資格を身に着けておくのがおすすめです。
(3)業界知識
M&Aを行う業界は幅広くあり、それらに対する専門的な知識があれば、転職時に有利と言えるでしょう。
とくにコロナや中小企業の後継者不足などの社会情勢を背景として、事業再編や統合の動きが各業界でも活発になっています。
世の中でとくにM&Aが進んでいる業界は以下の4つです。
- メーカー業界(自動車・印刷・鉄鋼・食品など)
- IT業界(通信・インフラなど)
- サービス業界(不動産・アミューズメントなど)
- メディカル業界(薬品など)
近年、企業のDX化に対する需要などを背景に、IT業界におけるM&Aや事業再編が活発になりつつあります。
また、医療や薬品などの領域でも事業拡大などの動きが見られてきました。
そのため、上記のような業界に特化した知識を持っていれば、M&A業務を進めるうえで有益なアドバイスが行えます。
現時点で業界についての知識を有していない場合でも、業界や企業に対する研究を踏まえて転職活動に臨むことで、転職活動に有利に働くでしょう。
もちろんこれらの知識は、業務の中で深掘り・更新していくことが必要なので、転職後にも勉強・研鑽が必要となります。
5.未経験者がM&A業界への転職を成功させるためのポイント
未経験者がM&A業界への転職を成功させるためには、以下の6つのポイントが重要です。
- M&Aに関する資格を取得する
- 営業力の高さをアピールする
- 英語力をアピールする
- 金融知識をアピールする
- M&A業界への転職を希望する理由を明確にする
- 転職エージェントのサポートを受ける
とくにM&A業界では必須のスキルとも密接に関わってきますので、ぜひ押さえておきましょう。
(1)M&Aに関する資格を取得する
1つ目のポイントは、M&Aに関する資格を取得することです。
M&A業務に関する国家資格はありませんが、民間資格には様々なものがあります。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 事業承継・M&Aエキスパート認定資格
- M&Aスペシャリスト
- 事業承継士
- 日商簿記1級あるいは2級
資格を取得することで、応募書類や面接時にスキルとしてアピールすることができます。
また、取得を目標に勉強をしていることを伝えれば、意欲や入社後の熱意をアピールすることにもつながるでしょう。
(2)営業力の高さをアピールする
2つ目のポイントは、営業力の高さをアピールすることです。
とくにM&A仲介では高い営業力と交渉力が要求されるため、前職での営業実績については必ず説明できるようにしておきましょう。
具体的には、表彰歴や達成率などの客観的な指標でアピールできると良いでしょう。
また、結果だけではなく、なぜその結果が出せたのか、工夫したことはなにか、他者と比べた自分の営業スタイルや方針はなにか、といったプロセス分析・自己分析を踏まえて面接に臨むことをおすすめします。
そのような徹底したプロセス分析・自己分析は、入社後のM&A業務を進めていくうえで要求される論理的思考能力を示す指標にもなるため、対策をしておくとしっかりとアピールすることができるでしょう。
(3)英語力をアピールする
3つ目のポイントは、英語力をアピールすることです。
とくにFASのM&A部門や銀行・証券会社のM&Aチームは海外の企業を顧客とする場合もあるため、ビジネスレベルの英語力が要求されます。
また、契約書類の作成ややりとりにも英語が使われるので、英語の読解力も要求されます。
そのため、FASや銀行・証券会社のM&Aチームへの転職を目指す人は、オンライン英会話やTOEICを活用して英語力を研鑽することをおすすめします。
(4)金融知識をアピールする
4つ目のポイントは、金融知識をアピールすることです。
M&A事業の領域にもよって、要求される金融知識のレベルには差があります。
M&A仲介会社では財務を扱うため、要求される金融知識の基準は日商簿記2級以上とされます。
また、FASや銀行・証券会社のM&Aチームではより専門性が高い知識が要求され、公認会計士や税理士レベルの知識が基準と言えます。
そのため、以下のような資格を持っていると高い評価を受けます。
- 公認会計士
- 税理士
- 弁護士
- 日商簿記1級または2級
また、実務経験もあると優遇されたり高く評価されたりします。
上記のような資格を有しない場合でも、事業会社などでの財務・経理経験などがあれば積極的にアピールしましょう。
(5)M&A業界への転職を希望する理由を明確にする
5つ目のポイントは、M&A業界への転職を希望する理由を明確にすることです。
M&A業界では財務や会計・法務に関する総合的なビジネス知識と高い営業スキルが要求されます。
とくに、経営者であるクライアントのパートナーとなって様々な悩みや不安を共有し、中長期にわたってサポートするという高いスキルと人間力が備わっていることが前提となります。
そのため、「キャリアアップができそう」、「スキルアップがしたい」という漠然とした理由では不十分と言えます。
転職理由や入社後の展望などについては、具体例を交えて客観的に話せるレベルの徹底した自己分析が必要でしょう。
(6)転職エージェントのサポートを受ける
6つ目のポイントは、転職エージェントのサポートを受けることです。
転職エージェントは業界や企業の市場動向や内情に精通し、豊富な転職成功実績を持っています。
そのため、業界に対する深い理解と転職成功実績に裏付けられた実践的なアドバイスやサポートを受けることが可能です。
とくに応募書類や面接において自分の経歴やスキルを効果的にアピールすることは重要です。
転職エージェントを活用すると、専門的かつ客観的な観点から有益なアドバイスやサポートを原則無料で受けることができます。
また、転職エージェントの中にはM&A業界への転職に特化あるいは強みをもつものもあります。
具体的には、以下のような転職エージェントが挙げられます。
会社名 | 特徴 |
アクシスコンサルティング | 未経験の方のM&A業界への転職についても支援を行っている |
リクルートエージェント | 業界最大数の非公開求人を保有 |
JAC Recruitment | 管理職クラス、外資系企業、海外進出企業などハイクラスの転職支援に強みを持つ |
ムービンストラテジックキャリア | 異業種からの転職特集を細かく組み、自身に合った求人を探しやすい |
ユニキャリア | コンサルティングファームや東証1部の有名大企業からベンチャー企業、まで数多くの支援実績を持つ特化型転職エージェントサービス |
志望する企業ごとにきめ細かな対策を行い、M&A業界への転職を一歩でも近づけたい人には転職エージェントを活用することをおすすめします。
まとめ
未経験でもM&A業界への転職は可能です。
近年のM&Aに関する需要や案件の増加に伴って、未経験者の中途採用が増加していることがその背景にあります。
ただし、M&Aという業務内容の性質上、高いスキルや知識が求められるので、未経験からの転職の難易度は高いと言えます。
未経験者がトライできるポジションや必要なスキルなどを確認した上で、どのような領域や企業へ転職をしたいか、自身のスキルやキャリアプランから絞り込みを行いましょう。
また、転職活動を有利に進めるためには業界や企業に対する正確な情報収集が欠かせません。
転職エージェントは業界や企業の動向や内情に精通しているうえに、豊富な転職成功実績を有しています。
転職エージェントに登録することで、コンサルタントやキャリアアドバイザーが有する転職ノウハウに基づくきめの細かいサポートが受けられ、選考通過に近づきます。
また、M&A業界の転職に向け、転職成功のコツや転職事情などより情報収集したいという方はこちらをご覧ください。
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