【未経験からM&A業界へ】財務のプロであるFASの転職ポイントを紹介
「FASへの転職を検討しているが、FASはM&A業界の他の業種とどう違うの?」
「FASへの転職事情について詳しく知りたい」
FASとは「Financial Advisory Service」の略で、M&Aや財務に関する業務を提供するコンサルティングファームを指します。
FASは平均年収が30歳前後でも700万〜900万円と、30代前半の男性の平均年収458万円を大きく上回ることや、財務の専門性が身につくことから、転職市場でも人気を誇る業種です(出典:国税庁長官官房企画課「民間給与実態統計調査」)。
本記事では、FASについて最新の転職事情や転職に有利になる経験や資格を紹介します。
仮に前職でFASに関する業務を行っていなかったとしても、コンサル適正をアピールすることで可能性は0ではありませんので、ぜひ参考にしてください。
M&A業務を中心に行うFASについて詳しく知って、転職活動を成功させましょう。
1.FASはM&A業界でどのような立ち位置なのか
M&A業務を行う企業は、FAS以外に2つ存在します。
- M&A仲介
- M&Aアドバイザリー
FASとそれぞれの会社との違いについて見ていきましょう。
(1)M&A仲介との違い
M&A仲介はM&Aの売手と買手の間に立って、M&Aの成立をサポートする役割を担う企業です。
FASが売手または買手どちらかから依頼を受け、クライアントの利益を大きくするために相手方と交渉を行う企業であるのに対して、M&A仲介は、M&Aを行う双方の利益を求めることを目的としている点が大きな違いといえます。
M&A仲介は売手と買手の両者のため、FASは売手と買手どちらかのクライアントのためと、誰のために活動するのかが異なることを覚えておきましょう。
- M&A仲介:売り買い双方の利益を求めることを目的として交渉を行う
- FAS:クライアント(主に売り手か買い手のどちらか)の利益を最大化するために交渉を行う
ここでさらに、M&A仲介について詳しく知っておきたいという方はこちらをご覧ください。
(2)M&Aアドバイザリーとの違い
M&Aアドバイザリーは、M&Aに関する総合的なアドバイスや、実務面のサポートをする企業です。
クライアントの意向を確認しながらM&Aを行うタイミングや価格などについて助言を行い、利益がより多く残る方法を提案する点はFASと同じ業務内容となります。
一方FASはM&Aの他にも、クライアントに対して財務関連のアドバイザリーやコンサルティングサービスを提供する会社であるという点がM&Aアドバイザリーと異なります。
M&Aを検討するための経営戦略を考える業務に加え、事業再生支援や企業価値評価支援、フォレンジック(不正調査・予防)などの業務も担っています。
- M&Aアドバイザリー:M&Aに関する総合的なアドバイスや実務面をサポート
- FAS:財務面を専門として、経営戦略や事業再生支援なども行う
2.FASの業務内容
FASの業務内容について見ていきましょう。
- M&A
- 企業・事業再生
- 企業価値評価
- 経営戦略・高度化
- フォレンジック
FASは、業務の中でも大部分を占めるM&Aのほかに、企業・事業再生、企業価値評価など、多様な業務を担っています。
クライアントにとっては、M&Aという手段を選ぶ前に、経営戦略の見直しや企業・事業再生などの提案を受けることで、自助努力で事業の立て直しを図るアドバイスを受けられることが魅力です。
FASの業務内容について詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
3.FASへの転職事情
M&A業界の中でのFASの立ち位置がわかり、FASへの転職が自身のやりたいことに合致しているため、前向きに転職を検討したいと思った人も多いと思います。
ここからは、FASへの転職事情を2つに分けて見ていきましょう。
- FASへの中途採用ニーズ
- FASへ転職する人の年齢層
以下で見ていきましょう。
(1)FASの中途採用ニーズ
FASへの就職は、ほとんどが中途採用によるものと考えて良いでしょう。
資金的・人員的に余裕のあるBIG4系FASなどであれば、大学を卒業したばかりの若手を新卒採用で雇い、今後に向けて育てていく余裕があるかもしれません。
しかし多くの中堅以下のFASでは、増えるM&A案件に対応できる即戦力の採用が求められており、中途採用のニーズが高まっていることがわかります。
年間でファームの2〜3割に当たる数を中途採用で募集する会社もあるため、中途採用でFASへ転職できる可能性は高いといえますが、誰でも採用しているわけではないため、以下で紹介するFASへの転職に有利になる経験や資格を身につけることが大切です。
(2)FASへ転職する人の年齢層
FASへ転職する人の年齢層は、ポテンシャル採用も含め、第二新卒から20代後半が目安となります。
30代以上は監査またはFAアドバイザリー経験がある人が基本となっており、全くの未経験では転職難易度は高いといえるでしょう。
またFASへ転職する人の前職で多いのは公認会計士で、ほかにコンサルタント、金融機関での投資部門、税理士、事業会社での経理経験者などが挙げられます。
FASへの転職は年齢的に若い人の方が有利のため、転職を迷っている人も早いうちに転職に向けての準備を行うと良いでしょう。
4.FASへの転職は未経験でも可能?
FASへの転職は経験者の方が有利であるものの、コンサル適正をアピールすることで未経験者も採用される可能性は十分あります。
- 論理的思考力
- コミュニケーション能力
FASは戦略コンサルタントの側面も持っているため、クライアント企業の経営者層と今後のの経営戦略について話し合う機会も多くあります。
その際必要になるのが、物事を筋道を立てて考える論理的思考力と、クライアントの意向を良く理解し、こちらの提案をブレなくしっかりと伝えられるコミュニケーション能力です。
コンサルタントには不可欠なこの2つの能力があることを、面接官との話の中でアピールすることができれば、未経験者であっても採用の可能性があるといえるでしょう。
5.FASへの転職に有利になる経験・資格
未経験でもFASへの転職の可能性がある点について伝えましたが、FASへの転職に有利になる経験や資格にはなにがあるのかを紹介します。
- コンサルティング経験
- 経理財務の実務経験
- 会計系の資格
- 財務会計知識
順に見ていきましょう。
(1)コンサルティング経験
まずは、コンサルティング経験です。
コンサルタントは、企業の抱えている問題に対して解決に向けた支援活動を行う役割を担っています。
解決策としてクライアントに対してM&Aを提案することもあり、実務的なことはしないものの、M&Aへの理解が深い点は大きなポイントとなるでしょう。
コンサルタントは論理的思考力やコミュニケーション能力が高いとみられるため、FASへの転職に有利といえます。
(2)経理財務の実務経験
次にFASへの転職で有利になる経験は、経理財務の実務経験です。
金融系やコンサル系企業で働いた経験がなかったとしても、一般企業の経理財務部門での実務経験があれば、財務業務のスキルを有しているとして評価の対象になるでしょう。
例えばFASでM&Aや事業継承といったさまざまなオファーを受諾する際、M&A対象企業の企業価値、事業価値、株式価値をはじめ、さまざまな価値評価を実施するバリュエーションという作業において、経営数値を読み解いてきた経験は大きく役に立ちます。
(3)会計系の資格
会計系の資格を保持している人も、FASへの転職に有利です。
- 公認会計士
- USCPA(米国公認会計士)
- 税理士
- 簿記(1,2級)
上記は一例となりますが、このような知識・能力を示す分かりやすい資格を保有していると有利なようです。
実際に公認会計士がFASへ転職する事例は多く、資格と経験が高く評価されていることがわかります。
(4)財務会計知識
資格として保有していなくても、財務会計知識があることを示すことができれば、FASへの転職に有利です。
特に金融機関、商社、投資銀行、事業会社における経営企画等に携わった経験があると、財務会計知識があると評価されやすくなります。
いずれかの経験や資格をアピールし、FASへの転職を有利にしていきましょう。
まとめ
M&Aや財務業務に特化してコンサルティングを行うFASの転職事情について紹介しました。
FASへの転職難易度は決して低いとはいえませんが、中途採用を通年行っている会社も多くあり、これまでの経験や資格を活かすことで、未経験者であっても十分に転職成功の可能性があるでしょう。
コンサルティング経験や会計系の資格を保有している人は特に有利といえますが、もし無い場合でも、諦めることはありません。
FASへの転職を希望する人は、その道のプロフェッショナルのアドバイスが受けられる転職エージェントサービスを活用しながら、転職成功を目指して活動していってください。
本記事を読んで将来FASへの転職を目指し、FAS業界の代表企業やキャリアアップ、転職成功のコツなど、さらに詳しく知っておきたいという方はこちらをご覧ください。
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