【不動産営業からの転職】どの業種・職種が人気?転職時の年収面での注意点3つ
「不動産営業のノルマがハードで転職したい」
「不動産業界の営業から転職するのにおすすめの業界は?その時の年収は?」
不動産営業は、不動産という高額な商材を通してお客様の人生に寄り添う責任のある仕事であり、数ある営業職の中でも難易度の高い営業の1つといわれています。
高年収を得られ、様々なビジネススキルが身につくというメリットもある一方で、ノルマやストレスで大変な面もあり、転職を考える人も少なくないようです。
そこでここでは、不動産営業職からの転職について、人気の転職先や年収、評価されるスキル、さらに転職時の年収面での注意点3つと合わせて解説します。
不動産営業の仕事から新しい舞台で活躍したいとお考えの方はぜひ参考にしてください。
1.不動産の営業職の年収比較
まずは、不動産の営業職の平均年収とあわせて、他業種との比較、平均年齢や就業形態、離職率について解説します。
- 不動産の営業の平均年収(推定)
- 他業種との平均年収比較
次に1つずつ見ていきましょう。
(1)不動産の営業の平均年収(推定)
不動産業の営業職の平均年収は約578.3万円(推定)です。(出典:厚生労働省 )
日本の平均年収が461万円(男性567万円、女性280万円)である中、大きな金額が動く不動産業界の平均年収は高水準となっています。(出典:国税庁 )
また、成果によってプラスされる報酬のインセンティブを設けている企業も多いことから、実力や成果によってはさらに高い年収を得ている不動産の営業職の人も少なくありません。
ちなみに、不動産の営業が得られるインセンティブは、取引で得た仲介手数料の5~15%程度が一般的といわれています。
不動産営業の中でも最も高いインセンティブを設けているのが、難易度が高いといわれる不動産売買仲介営業です。
不動産売買仲介営業は、ノルマのハードルも高くなることが多い一方、成約に至れば自分の収入も大幅に増えるため、営業力に自信のある人にとってインセンティブは大きなモチベーションとなっています。
(2)他業種との平均年収比較
不動産の営業職の平均年収と他業種の平均年収も見てみましょう。
業種 | 平均年収(推定) |
不動産業 | 578.3万円 |
化学工業 | 569万円 |
金属機械工業 | 545万円 |
運輸通信公益事業 | 535万円 |
建設業 | 475万円 |
その他の製造業 | 443万円 |
サービス業 | 437万円 |
卸小売業 | 389万円 |
繊維工業 | 353万円 |
農林水産・鉱業 | 326万円 |
(出典:国税庁 )
不動産営業職は、他の業種と比べても高水準の年収を得ることができます。
しかし、その一方で、ハードなノルマや接客や上司からのストレスなどで転職を考える人も多く、不動産営業の離職率は他の業種の営業よりも高いといわれています。
不動産の営業職の人が転職する場合、現在よりも高い年収を得たいなら業種別の平均年収を参考にするとよいでしょう。
2.不動産の営業職から人気の高い4つの転職先
様々なビジネススキルを持つ不動産営業は、転職市場でも人気が高く、選択肢も豊富です。
中でも、不動産営業職の人から人気の高い転職先は次の4つです。
- 同業他社の営業職
- 他業種の営業
- コンサルティングファーム
- M&A業界
不動産営業からの転職理由として、ノルマ・ストレス、年収アップ、キャリアアップを挙げる人が多いです。
それぞれの転職理由から選ぶ転職先も異なっています。
(1)同業他社の営業職
1つ目の人気の転職先は、同じ不動産業界の他社の営業です。
同業種への転職は、経験をそのまま活かせるため人気が高いです。
また、不動産営業経験者は、正確な情報をお客様に伝えるために宅建の資格を取得している人も少なくありません。
不動産営業の仕事は必ずしも宅建の資格が必要ではありませんが、お客様が安心して取引できるよう、宅建士の独占業務である重要事項の説明や重要事項説明書への記名・押印、契約書への記名・押印を自分で行うために取得する人も多いです。
それらの資格やスキルを活かせるのは、やはり同業の営業職であり、より良い条件の不動産会社の営業職へ転職するという人も少なくありません。
同業他社への転職は、そのまま不動産業界で築いた人脈を活かせる上に、即戦力として活躍できることで待遇などの交渉がしやすいなど給与面でも満足できることが多いです。
(2)他業種の営業
2つ目の人気の転職先は、他業種の営業です。
「営業の仕事は好きだけれどノルマが厳しい不動産の営業はきつい」という人から人気がある転職先です。
営業は自社が取り扱う商品やサービスを販売する仕事です。
高額商材を取り扱う不動産営業は営業職の中でも高い営業スキルが求められるため、そこで成果を出している営業職の人は取り扱う商材が変わっても仕事になじむのが早いといわれています。
そのため、全くの未経験の職種に転職するよりも、業種が変わっても同じ営業の仕事を選んだほうが年収水準や待遇を維持したままの転職可能であることも多いです。
実際、販売が難しい不動産の売買に関わっていた営業マンが、他の業種の営業でも即戦力として歓迎され高待遇で採用され、結果を出しているケースも少なくありません。
(3)コンサルティングファーム
3つ目の人気の転職先は、コンサルティングファームです。
営業の仕事とコンサルの仕事は、商材が異なりますが、相手のニーズを読み取り、的確な解決策を提示する点で類似点があります。
高額な不動産を取り扱う不動産営業では、お客様の要望や条件をしっかりと聞き取り、それに見合った提案をすることが求められるため、ヒアリング力や分析力、プレゼンテーション能力など様々なビジネススキルが磨かれます。
それらのスキルは、経営課題に対するアドバイス・知見を商材とするコンサルティングファームでも大いに役立ちます。
論理的思考をもとに、クライアントの経営課題等を見極めて適切な提案をするという流れは、不動産営業経験者にとってなじみやすいことも、不動産営業からコンサルティングファームへ転職する人が多い理由といえるでしょう。
また、コンサルティングファームで得られる高年収も、不動産営業職からの転職先として選ばれている理由の1つです。
不動産営業からコンサルティングファームへの転職時の職位となることが多いコンサルタントで年収を見てみましょう。
コンサルティング領域 | コンサルタントの職位での平均年収(推定) |
戦略コンサルティングファーム | 900~1,300万円 |
総合系コンサルティングファーム | 500~700万円 |
組織・人事コンサルティングファーム | 600万~900万円 |
業務・IT系コンサルティングファーム | 400万~900万円 |
コンサルティングファームの年収は、外資・日系、領域や職位によって大幅に異なります。
不動産営業からの転職の場合、前職の給与水準にもよりますが、600万円程度からのスタートとなることが多いようです。
営業と同じくコンサルの仕事でもインセンティブが設けられているため、成果によっても大きく年収が異なってくるのがコンサルティングファームの特長であり、経験を積み実績を上げていけばその後の年収増加を大いに期待できる仕事といえます。
3.転職時に役立つ【不動産営業で身につくスキル】
不動産の営業の仕事に携わることで、ビジネスパーソンとして役立つ様々なスキルが身につきます。
- 不動産・金融関連等の知識や資格
- 高いコミュニケーション能力
- スケジュール管理能力
- プレゼン能力
- 忍耐力
そのスキルは転職の際にも企業から高く評価されるものであるため、不動産の営業が転職する時に有利に働き、選択肢を増やしてくれます。
転職を考えているなら、自分のスキルに自信を持ち、存分に力を発揮できる仕事を探しましょう。
(1)不動産・金融関連等の知識や資格
1つ目のスキルは、不動産・金融関連等の知識や資格です。
不動産の営業は、商材である不動産を取り扱う上で必要となる様々な不動産関連知識が身につきます。
しかし、不動産の営業に求められるのは、それだけではありません。
不動産の購入や売却、賃貸にあたり深く関わるお金の知識や関連する法律の知識が必要ですし、さらに相続や贈与の際に、それに関する知識をインプットする機会も少なくないと言われています。
これらで得られた金融や法律、相続関連の知識は、上記にあげたコンサルティングファームやM&A業界で高く評価されることが多いでしょう。
また、不動産営業の人の中には宅建やFP(ファイナンシャルプランナー)、住宅ローンアドバイザー、住宅販売士、相続診断士などの資格を取得している人も多いかと思います。
これらの資格は、「資格を持っていること」自体が評価されるだけでなく、思考方法や仕事の進め方などにも大きく影響を与えるものです。
さらに、仕事に対する真摯さや向上心を表すものとして、高く評価するという企業も少なくありません。
不動産の営業の仕事で取得した資格や知識は、同じ不動産業界に転職した時だけでなく、他業種・他職種への転職時にも強力な武器として有利に働くことでしょう。
(2)高いコミュニケーション能力
2つ目のスキルは、高いコミュニケーション能力です。
不動産の営業は売り手・買い手どちらも人を相手に行う仕事です。
新居を購入したい家族、下宿を探す学生、投資用のマンション購入を考えているパワーカップル、所有する土地で賃貸アパートを建てたい地主など様々な目的や条件・要望を抱える多彩な層のお客様と深く関わるうちに高いコミュニケーション能力を身につけることができます。
世の中で人と全く関わらない仕事はほとんどないため、不動産営業で身につけた高いコミュニケーション能力はどんな仕事でも活用できるポータブルスキルであり、企業側からも高く評価されるスキルです。
高いコミュニケーション能力が転職先の選択肢を増やしてくれるのは間違いありません。
(3)スケジュール管理能力
3つ目のスキルは、スケジュール管理能力です。
お客様の相談、内覧など、不動産の営業はお客様の要望に沿って行動することが多いのですが、営業の仕事は接客だけではありません。
その他にも、不動産の調査や管理の仕事など多岐にわたっており、それらと並行して仕事をこなしていく必要があるため、自然とスケジュール管理能力が鍛えられます。
スケジュール管理能力は、ただ単に予定を組み立てる・予定通りに動いて時間を守ることだけではなく、適切な時間配分をするスキル、仕事の優先順位をつけて順番を調整するスキル、急な変更や突発的な事態にも柔軟に対応するスキルなど、様々なスキルも含んでいます。
スケジュール管理能力が高い不動産営業経験者は、コンサルティングファームなどのハイクラス業界からのニーズが高いと言われています。
(4)プレゼン能力
4つ目のスキルは、プレゼン能力です
不動産の売買・賃貸などを行う不動産の営業では、お客様のニーズを読み取り、的確な案件や情報を提示するプレゼン能力も磨かれます。
また、わかりやすい資料の作成能力、データや情報の収集能力、相手の心をつかむ話し方や表情の作り方でアプローチする能力、明瞭に伝える能力なども自然と身につきます。
人を相手にする仕事において、プレゼン能力は大きな武器となります。
営業や人事、コンサルやM&Aなど様々な職種・業種から不動産営業経験者を求める声が強いのも当然と言えるでしょう。
(5)忍耐力
5つ目のスキルは、忍耐力です。
不動産の営業にはノルマが設けられていることも多く、それをクリアするために残業や休日出勤などを行うことも珍しくありません。
また、高額な商材を取り扱うため、お客様からの無理難題やクレームを受けることもあります。
また、土日祝日が出勤日となることも多いため、ワークライフバランスを取るのが大変という面もあるようです。
不動産営業は肉体的にも精神的にもタフさが求められる仕事であるため、必然的に忍耐力も身につきます。
イヤなことがあるとすぐに辞めてしまうという人が多い中、不動産営業で鍛えた忍耐力は企業でも高く評価されます。
転職の面接の際には忍耐力もアピールすると良いでしょう。
4.不動産営業の人が転職する際の年収に関する3つの注意点
不動産の営業で身につけた知識・経験・資格・スキルは転職時に高評価を受けるため、豊富な選択肢の中から自分に合った仕事を見つけやすくしてくれる大きな武器となります。
しかし、選択肢が多い分、迷いやミスも生まれやすくなるともいえます。
転職後に年収面でその選択に不満を抱くことのないよう、転職先を選ぶ時には次の3点に注意しましょう。
- インセンティブの有無と条件
- 福利厚生
- 企業・業界の将来性・伸びしろ
次に1つずつ解説していきます。
(1)インセンティブの有無と条件
1つ目の注意点は、インセンティブの有無と条件です。
不動産の営業は、売上を上げれば上げるほどインセンティブが得られて年収を上げることができる仕事です。
しかし、不動産業界の営業では当たり前のインセンティブと同様の制度が転職先にあるとは限りません。
不動産の営業と同じく、コンサル業界やM&A業界、金融業界や自動車業界などインセンティブのある業界・企業もありますが、その場合もインセンティブの割合や条件は業界・企業によって大きく異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
特に、不動産営業で高額なインセンティブを得ていた営業職の人ほど、インセンティブがなくなることで年収が下がってしまうことが多いです。
転職先にインセンティブ制があれば、その後の仕事内容次第・頑張り次第で不動産営業の仕事に就いている時以上の年収を得ることも可能ですが、そうでなければ年収面で不満を感じることになる可能性もあるため、事前にしっかり確認しましょう。
(2)福利厚生
2つ目の注意点は、福利厚生です。
福利厚生は、給与のように明らかな数字としては分かるものではありませんが、企業の福利厚生の充実度は確実に可処分所得に大きな影響を与えます。
企業の中には、基本給やインセンティブを好条件にしている一方で、福利厚生はそれらに含まれるとしてあまり力を入れていないという企業も増えているため、転職先選びの時には注意が必要です。
不動産業界では正社員として雇用する企業が多く、社員寮や社宅、家賃補助などの住宅関連、出産・育児や介護などのライフサポート関連、慶弔関係、資格取得支援などのキャリアアップサポート、各種手当などの法定外福利を充実させている企業も少なくありません。
しかし、そこから福利厚生がさほど充実していない企業に転職すると、家賃負担が重くなったり、ライフステージごとに必要となるサポートが十分に受けられなくなるなど思わぬ負担や支出が増えることになり、実質、手取りの年収が低くなってしまうことになります。
年収額だけでなく、福利厚生も必ず確認しましょう。
(3)企業・業界の将来性・伸びしろ
3つ目の注意点は、企業・業界の将来性・伸びしろです。
よりよく働ける職場を求めて不動産営業の仕事から転職したのに、転職先企業の経営不振や業界全体の不調などに見舞われてしまうと、賞与なし・給料ダウン、挙句の果てには倒産など大変な事態に見舞われかねません。
そのため、転職をする際は、その企業や業界の好不調や将来の成長性などもしっかり確認しましょう。
また、AIの導入も留意事項です。
野村総合研究所と英オックスフォード大学の共同研究で『日本の労働人口の49%が人工知能やロボットなどで代替可能』 (出典:野村総合研究所)という発表が2015年にあってから今日にいたるまで、セルフレジ・車の自動運転などAI化は次々に進んでいます。
新しい仕事が将来的にAIにとってかわられる仕事でないか、もしくはAIによって仕事内容や待遇が変化する仕事でないかも確認しましょう。
まとめ
不動産の営業職は、平均年収も高く、インセンティブによって更なる高年収も期待できる上に、様々なビジネススキルを身につけられる仕事です。
その一方で、ノルマやストレス等もあることから転職を考える人は多いようです。
不動産の営業で獲得した経験や知識・スキルは全て大きな財産・資産であり、転職時に強力な武器となるため、不動産の営業の仕事からさらに次のステージや環境で活躍したいと思ったら迷う必要はありません。
その際は、今回紹介した不動産営業の人に人気の転職先や注意点を参考に、ぜひ持ち前のスキルを活かせる仕事を見つけましょう。
また、より良い転職を実現するために、不動産営業職の転職に強い転職エージェントや転職サイトを利用することもおすすめします。
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(4)M&A業界
4つ目の人気の転職先は、M&A業界です。
企業間のM&Aを仲介・支援するM&A業界も、コンサルと同じく大きく成長している業界であり、他業界と比べると圧倒的に平均年収が高いことで知られています。
M&Aアドバイザリー・M&A仲介会社どちらも高い専門性と論理的思考が求められ、より経営者に近い位置で仕事をすることができることから、キャリアを広げたい不動産営業の人が好んで転職をする業界です。
企業買収成立時に動く金額が大きく、一人のM&Aアドバイザーが取り扱う案件数も多いことから平均年収も桁違いに高くなっており、20代の平均年収は約900万円、30代が約1,000万円といわれています。
さらに、手掛けた案件が成功した場合はインセンティブとして高額な報酬が得られることも多く、不動産業界で営業をしていた時よりもはるかに高額な年収を得ることができます。
その分、業務内容は複雑で高度な専門性やビジネススキルやセンスが求められますが、それらを駆使して困難なM&Aを取りまとめた時の達成感はとても大きいことでしょう。
M&A業界への転職は狭き門ではありますが、高年収を得たい人はもちろんのこと、ビジネスパーソンとしての成長機会ややりがいを求める不動産営業の人から人気の転職先となっています。