営業職からの転職で年収を上げるのは?営業職に人気の転職業界5選と4つの注意点
「営業の仕事から転職すると年収が下がるって本当?」
「営業経験者が転職する時に気を付けるべき注意点は?」
営業の仕事は、企業の顔として働き、企業の売上にも大きく関わる重要な仕事ですが、その分、プレッシャーやストレスもあることから転職する人も多い仕事です。
そんな営業の仕事からの転職を自分も考えているけれど、どこに転職すればよいか、気を付けるべき点はなにか等わからないことばかりで動けないでいるという人もいることでしょう。
ここではそんな迷いを持っている営業職の人に知っていてほしい、営業職の転職先として人気の5つの業界と年収の面での4つの注意点を、営業職の年収と合わせて解説します。
今、転職を迷っている人はぜひ参考にして転職活動を始めましょう。
1.営業職の平均年収と年齢別・職種別年収比較
営業職の転職についての解説の前に、まずは営業職の平均年収や、年齢別・職種別の平均年収について見てみましょう。
- 営業の業種別平均年収
- 営業の年齢別平均年収
- 職種別平均年収比較
営業の仕事で得られる平均年収は、日本の平均年収や多くの他職種よりも高水準であり、さらに実力次第でさらに伸ばしていける夢のある仕事です。
次に1つずつみていきましょう。
(1)営業の業種別平均年収
営業の仕事の平均年収は500万円〜600万円(推定) 程度です。
日本の平均年収 461万円(男性567万円、女性280万円)と比較しても高水準となっています。(出典:国税庁 「平均給与」)
また、営業といっても業種によっても年収は異なってきます。
代表的な営業職の年収を業種別に見てみましょう。
業種 | 平均年収(推定) |
不動産営業 | 約450万円~1,000万円以上 |
自動車販売営業 | 約450万円~1,000万円以上 |
海外系営業職 | 約620万円~740万円 |
医療系営業職 | 約570万円~650万円 |
不動産や自動車のような扱う商材が高額となりやすい業界の営業職では、1,000万円を超える高額な年収をもらっている人も少なくありません。
また、同じ業種の営業職であっても年収に大きな幅がある理由は、営業職ならではのインセンティブ(歩合)のシステムも大きく関係しています。
インセンティブとは、基本給にプラスして成果にあわせて付与される報奨制度のことであり、営業職のインセンティブの相場は一般的には5~15%程度となっています。
成果分にインセンティブを加味する会社もあれば、「ノルマを越えた分の〇%」などとする会社もあるなど内容は様々ですが、成果を上げれば上げるほど年収もアップできることを強いモチベーションとしてハードワークをこなしているという営業マンも少なくありません。
ただ、不動産業界や自動車業界などは、インセンティブがある一方で、ハードなノルマがあるところも多く、それが原因で転職を考えるようになる営業職の人も少なくないようです。
(2)営業の年齢別平均年収
営業は、年齢によっても平均年収が大きく変わる仕事でもあります。
営業の仕事は、経験値や築いた人脈・人間関係が成果に大きく影響することから、年齢が上がるほど平均年収が高くなる傾向があります。
平均年収(推定) | |
20代 | 350万円〜400万円程度 |
30代 | 350万円〜450万円程度 |
40代 | 400万円〜550万円程度 |
50代 | 500万円〜600万円程度 |
また、年齢が上がるにつれて役職がつく人も増えることで年収水準は上がり、同世代でも年収の差が広くなりやすいようです。
(3)職種別平均年収比較
次に、営業職の平均年収と他職種の平均年収も比較してみましょう。
職種 | 平均年収(推定) |
営業職 | 500万円〜600万円 |
専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人) | 585万円 |
企画/管理系 | 527万円 |
技術系(IT/通信/電気/電子/機械) | 442万円 |
金融系専門職 | 434万円 |
技術系(建築/土木) | 422万円 |
技術系(メディカル/化学/食品) | 386万円 |
クリエイティブ系 | 374万円 |
事務/アシスタント系 | 336万円 |
販売/サービス系 | 325万円 |
営業職は、他の職種と比べても平均年収が高い水準にあるようです。
営業職の人が転職する場合、現在と同程度もしくは更に高い年収を得たいなら職種別の平均年収を参考にするとよいでしょう。
また、セールス力やコミュニケーション能力等に自信のある人は、営業と同じくインセンティブ制が導入されている職種(コンサル・金融など)を選ぶと、営業での給与水準を維持もしくはそれよりも高い年収を得るチャンスが増えます。
2.営業職の転職先として人気の高い5つの業界
営業から転職する人の中で人気が高いのが次の業界です。
- 同業種・異業種の営業職
- 事業会社の各部門
- コンサルティングファーム
- M&A業界
- ベンチャー
ビジネスパーソンに求められる様々なポータブルスキルを身につけた営業職経験者は、転職市場での評価も高く、転職の選択肢も広いです。
各種スキルは様々な業種・職種で活用できるため、転職後に新しい職場で営業の仕事をしている時以上に活躍している人も少なくありません。
(1)同業種・異業種の営業職
1つ目の人気のある転職先は、同業種・異業種の営業職です。
営業で培ったスキルは様々な職種に活かせるポータブルスキルですが、やはり同業他社の営業への転職が一番堅実な選択肢といえるでしょう。
同業種であれば既に持っている人脈もそのまま活用できますし、実績や能力も評価されやすいため、年収を下げることなくすぐに活躍できるメリットがあります。
同じ営業職であれば、異業種に転職しても扱う商材が変わるだけなので、持ち前のスキルを活かして即戦力として活躍しやすく、給与面でも満足できる転職になることが多いです。
ただし、営業職から同じ営業職の転職をする場合は、より良い環境で働くために次の4点をチェックしましょう。
- 「ノルマなし」「残業なし」の文言
- 転職サイトでの求人頻度
- 給料における歩合給の割合
- ターゲットが法人か個人か
営業の仕事では当然あると考えられる「ノルマ」「残業」がないと掲げる企業や、転職サイトで頻繁に求人を出している企業は、何らかの問題を抱えている可能性が高いので避けた方が良いでしょう。
また、給料における歩合給が高い企業は給料が不安定になりやすいため、安定した給料を得たい人は歩合給が低く基本給を高く設定している企業の営業を選ぶのがおすすめです。
また、ワークライフバランスを重視するなら、基本的に仕事は平日の企業の営業時間となる法人営業を選びましょう。
(2)事業会社の各部門
2つ目の人気のある転職先は、事業会社の各部門です。
営業で身につけたスキルは様々な部門で役立つため、営業から転職して別部門で活躍している人も少なくありません。
#1:商品開発・商品企画
営業職では、自社の商品やサービスを販売するために商材を研究・分析したり、市場やトレンドの調査をすることも多く、自然と分析力や調査力や”商品やサービスを見る目”が鍛えられます。
これらのスキルは、開発や企画をする際に大いに役立つことから、営業の仕事から企業の心臓部である商品開発や商品企画に転職し、活躍しているという人も多いです。
#2:人事
営業職は、様々な人と接する仕事です。
法人営業であれば企業の意思決定層と、個人であれば様々なニーズを抱えるお客様と接する機会が多いため、自然とコミュニケーション能力や交渉力や”人を見る目”も鍛えられます。
これらのスキルは、従業員の採用や配置、人事評価、人材育成など、組織の人材管理を行う人事の仕事にもフィットするスキルです。
営業で培ったコミュニケーション能力や”人を見る目”等を活かして、人事として企業の人材を活かす仕事で活躍している元営業マンも多いです。
#3:事務・秘書
営業の仕事は、お客様と接することも重要ですが、その時のために必要な情報やデータを資料にまとめておく業務も非常に重要であるため、資料作成スキルも自然と磨かれます。
この能力と共に正確さや時間厳守が求められる事務の仕事でも営業職経験者のスキルを十分に生かすことができます。
また、スケジュール管理や情報整理能力、調整力に優れ、人と接することが多いことからマナーや常識も身についている営業の人は、秘書の仕事でも引く手あまたです。
高い能力を買われて企業のトップの有能な右腕として活躍している人も少なくありません。
(3)コンサルティングファーム
3つ目の人気のある転職先は、コンサルティングファームです。
コンサルティングファームは、経営に興味のある営業職の人に人気です。
飛ぶ鳥を落とす勢いで規模を拡大しているコンサルティングファームが多いのですが、依頼の増加に比べて人材が足りておらず、未経験者を積極的に採用する傾向が強い業界です。
特に、経営者など意思決定層と関わることの多い法人営業職経験者のニーズは高く、良い条件で採用しているファームも少なくありません。
また、コンサルの仕事も営業の仕事と同じく未経験から始められるため、営業職経験者にとってもチャレンジしやすい業界となっています。
ただ、コンサルの仕事は、営業の仕事以上に成果が求められる仕事です。
高収入が得られてもノルマやプレッシャーを感じながら働きたくないという人よりも、目いっぱい働いて結果を出して高収入を得たいという営業経験者の転職先として選ばれています。
(4)M&A業界
4つ目の人気のある転職先は、M&A業界です。
コンサルと同じく、M&A業界も日本で増加するM&A案件数に比例して中途採用を増やしています。
後継者不足や競争力不足に悩む企業や、新しいビジネスチャンスを求める企業など、様々な企業を結び付けるM&Aは社会の発展にも役立つ重要な仕事です。
やりがいや社会的意義を重視して転職をする営業職経験者から人気です。
また、M&A業界も、営業やコンサルと同じく、インセンティブがつく仕事です。
M&Aは取り扱う金額も大きくなることから、高額の収入を得たい人からも人気が高くなっています。
(5)ベンチャー
5つ目の人気のある転職先は、ベンチャー企業です。
ベンチャー企業は、チャレンジ精神豊富な人から人気の転職先となっています。
ベンチャー企業は伸びしろも大きく、流れに乗って急成長している企業が多い反面、急激な拡大によって必要な人材(特に重役レベルの人材)の確保ができずに困っている企業も少なくありません。
高いコミュニケーション能力や情報収集スキル、交渉スキルなど、ベンチャー企業がさらに発展していく上で必要な能力を数多く備えている営業職経験者はベンチャー企業からの人気が高く、CxOなど高いポジションで転職をしている人も多いです。
ベンチャー企業は事業が成長していくフェーズにあるため、最初の年収は控えめであったとしてもその後の会社の事業展開によっては営業の時よりもはるかに高い年収を得ることも可能です。
また、自分の仕事で会社を大きくしていくという仕事の醍醐味、経営に直接関わり会社を動かしていくという楽しさ、様々な業務に関われる成長機会の多さなどベンチャー企業ならではの魅力も満載であり、実際に「転職して良かった」という元営業マンも少なくありません。
3.営業の人が転職する際の年収に関する4つの注意点
営業職の人が転職する際、特に気を付けたい年収に関する注意点を4つ解説します。
- 転職によって年収が下がる可能性がある
- 転職先選びの最重要条件を『年収』にしない
- 法定外福利厚生の手厚さ
- 業界の展望
営業職経験者は転職市場でも人気が高く、選択肢も豊富です。
しかし、選択肢が豊富だからこそ、転職に失敗しないように年収面での注意点をしっかりおさえておきましょう。
(1)転職によって年収が下がる可能性がある
1つ目の注意点は、転職によって年収が下がる可能性があることです。
「転職をすれば当然年収が上がるもの」と考えている人も少なくありませんが、それはあくまで”人による”ものであるため、転職をすることで確実に年収が上がるとは言えず、下がるケースも少なからずあるようです。
その理由として、転職先のインセンティブや企業文化が挙げられます。
営業職では当然のように設けられていることが多いインセンティブですが、業種・職種によってはインセンティブがないものや、あってもそれほど大きな金額とはならない会社もあります。
他にも、実力主義・成果主義の面が強い営業職から年功序列や在籍年数を重視する企業へ転職した場合なども年収が下がることがあります。
年収ダウンを避けたいなら、業種・職種別の平均年収を見て高水準のところを選ぶか、FPやキャリアコンサルタント、宅建、中小企業診断士、簿記などの転職を希望する業種・職種で評価される資格を現職在籍中に取得しておくと良いでしょう。
また、営業職と同様にインセンティブのある企業や業種・職種を選び、実力で年収を上げていくという手もあります。
(2)転職先選びの最重要条件を『年収』にしない
2つ目の注意点は、転職先選びの最重要条件を『年収』にしないことです。
営業職の人が転職する際、何よりも年収面を重視するという人もいますが、できればそれは避けるべきです。
確かに転職先を決める上で年収は重要なポイントではありますが、『高年収』をうたう企業は、社員に与えるものが大きい分、それに見合う仕事の質と量を求めてくることが多く、営業の時よりもノルマやクオリティのレベルがよりハードになる可能性が高いです。
現在の営業の仕事から転職をする理由として「ノルマによるストレス」や「上司によるプレッシャー」を挙げる人がそのような会社に転職したとしても、働く場所や仕事内容が変わっただけで問題は解決していないのですから、転職先でもうまくいくはずはありません。
また、営業実績のある人ほど自分の仕事スタイルに固執し、転職先の新しいルールややり方にアジャストできずに慣れるまで苦労するケースも多いようです。
また、『高年収』に惹かれて興味のない業界に転職しても、年収以外のメリットのない仕事にやりがいを感じられず、モチベーションが下がり、退職してしまうケースもあります。
このように、年収は転職時の重要なポイントの1つですが、それを営業職の転職時の最上位の条件にすると後で悔やむことも少なくありません。
より良い転職をするためには、最重要条件を「仕事のやりがい」や「キャリアプラン」にすると良いでしょう。
目標や楽しみを持って働くことができれば、転職で一時的に年収が下がったとしても、高いモチベーションで成果を出せるよう努力し続けることが苦ではなくなります。
前向きに働くことで成果も上げやすくなり、働きに見合った昇給・昇進も自然とついてくるため、結果的に年収アップにつながることも少なくありません。
(3)法定外福利厚生の手厚さ
3つ目の注意点は、法定外福利厚生の手厚さです。
営業力に自信のある人は、ベース給に加えて大きなインセンティブが得られる企業を選びがちです。
しかし、数字では表れないながらも年収に確実に大きく影響するのが福利厚生です。
福利厚生とは、企業が従業員に対して通常の賃金・給与にプラスして支給する非金銭報酬であり、いわば「企業皮従業員へのサービス・プレゼント」です。
もともと福利厚生が手厚い企業で働いている人は恩恵を受けているという意識が薄いことが少なくありません。
しかし、転職した先の企業の福利厚生の内容が薄いととたんに経済的に大きな負担となって家計を圧迫することも多いため、転勤先の企業の福利厚生はしっかりチェックしておく必要があります。
特に確認したいのが、法定外福利厚生の手厚さです。
さらに、従業員のスキルアップや成長をサポートするための資格取得支援制度や語学支援、セミナーや講演会の開催などの自己啓発関連の制度がある企業であれば、キャリアアップにも役立ちます。
法定外福利の充実した企業は概して働きやすく、環境や人間関係が良いところが多いため、転職後に気分よく働くことができると同時に仕事の能率もアップすることでしょう。
ただ、法定外福利厚生が手厚くても、実際には利用しづらい雰囲気のある企業もあります。
本当に社員に優しいホワイト企業なのか、形だけ整えているブラック企業なのかを判断するには、企業の口コミや離職率、求人情報サイトへの求人募集を出す頻度が参考になるので、その点もチェックするとさらに安心です。
(4)業界の展望
4つ目の注意点は、業界の展望です。
直接的に年収に関わることではありませんが、安心して働くためには、その会社だけでなく、その会社が属する業界・領域が安定していることや仕事に将来性があることが重要です。
今後の日本社会は、市場規模の縮小、人手不足、高齢化、AIの導入など様々な問題に直面する可能性が高いため、転職する業界の先を考えることは非常に重要です。
もし、転職先に斜陽業界の企業を選ぶと、今はなんとかなっていても、この先は市場が縮小し続ける中で仕事をすることになり、成果を上げ続けるのは難しくなります。
また、AIにとってかわられる仕事も今後ますます増えていくと考えられています。
そんな中で、将来性のない業界や人が行う仕事の幅が減る職種に就いてしまうと、年収どころか雇用も不安定になりやすく、キャリアを安定して築くこともできなくなります。
それを避けるためにも、営業の人が転職する際は、今後の成長が見込まれる業界の仕事を選びましょう。
そうすれば、仕事の量や幅の減少に対する心配や憂いなく、活躍する場を確保しながら思う存分働くことができます。
まとめ
営業職は、基本的に年収も比較的高く、ビジネスパーソンとして求められるスキルも自然と磨ける魅力的な仕事です。
その一方で、仕事内容・ノルマから離職率が他職種よりは高い傾向にありますが、この仕事で身につけたスキルはどんな業界・業種でも活かせるものばかりであるため、転職しやすく新たなキャリアを築きやすい魅力的な仕事でもあるといえます。
営業職の各種スキルを高く評価する企業も多く、転職時の選択肢も幅広い仕事ですが、逆に選択肢が多いからこそ迷うことも多いことでしょう。
しかし、年収面での不安は、4つの注意点に気を付けて企業を選べば解消が可能です。
さらに、営業職で得た自分のスキルや実績の棚卸や転職の目的や条件を明確化すること、加えて条件に合った企業とマッチングしてくれる転職エージェントや転職サイトを活用することで、転職成功の可能性をさらに高めることができるはずです。
ぜひ自分自身の将来と転職すべき企業をしっかりと見定め、営業の仕事で身につけたスキルを活かして更なるキャリアを築いていきましょう。
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